RO Breidablik 日記(仮)

Breidablikで活動するプレイヤーの雑感などを記録するブログです

こんばんは。お久しぶりです。
前回ブログを更新したのは、5月5日のことなので1ヶ月以上、期間が空いてしまいました。
新型コロナウイルス感染症の影響で、仕事にも多少影響があり、ちょっとブログを更新することが出来ませんでした。申し訳ありません。
今回、ガンホー、グラビティの売上等の履歴を、株主向けの広報活動であるIRから過去に遡って調べた表とその中から気になった点を記事にまとめてみました。
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実はこの様な表は以前から作っていたのですが、ガンホー、グラビティの株式上場は2005年と15年も前のことであり、表も大きくなってしまった為、これまでは紹介してきませんでした。
紹介する表に含まれる情報は、ガンホー、グラビティの公式サイトから得られるものをまとめたものに過ぎませんが、折角作ったので公開することにします。
いずれも上場企業ですし、投資家の人のブログなどで同様の記事があるかもしれません。
JROのサービスは、過去の様々な経緯を経て、現在の姿があります。過去の経緯を知ることで、現在のラグナロクオンラインがどうしてこうなったのかを知る手がかりになるのではないでしょうか。
今回は売上だけでなく、ガンホー、グラビティの来歴についても、簡単な調査を行い、記事に盛り込んでみました。
素人が片手間でやった調査なので、色々と抜けもあると思いますが、ご容赦いただけると幸いです。
過去に書いた同様の記事は、このブログの下記のカテゴリにまとめてあるので、そちらも合わせてご覧下さい。

1. 文書作成の目的

この文書は、2004~2019年度までのガンホー・オンライン・エンターテイメント、グラビティの売上の情報を整理し、紹介する目的で執筆する。
この文書内では、従来から存在するラグナロクオンラインをPC版ラグナロクオンラインと呼称する。
また、ラグナロクオンラインの知的財産を元にモバイル向けに開発されたグラビティのMMORPGをRagnarok Mと呼称し、前者と区別する。

グラビティ、ガンホー : RO Breidablik 日記(仮)

2. ガンホー・オンライン・エンターテイメント売り上げ

ガンホー・オンライン・エンターテイメント売り上げ 2004年 2005年 2006年 2007年 2008年 2009年 2010年
売上高 - 56億7087万2000円 68億2345万2000円 74億5140万0000円 112億4105万3000円 102億9358万7000円 92億4015万4000円
割合 - 100.00% 100.00% 100.00% 100.00% 100.00% 100.00%
RO関連売上高 - 46億3361万3000円 50億0333万4000円 56億7796万0000円 73億2851万1000円 77億4219万8000円 71億7637万9000円
RO関連売上高割合 - 81.71% 73.33% 76.20% 65.19% 75.21% 77.67%
パズル&ドラゴンズ関連売上高 - - - - - - -
パズル&ドラゴンズ関連売上高割合 - - - - - - -
ライセンスの支払いが占める割合(RO関連売上高) - 20.88% 33.07% 33.59% 24.92% 32.07% 31.29%

ガンホー・オンライン・エンターテイメント売り上げ 2011年 2012年 2013年 2014年 2015年 2016年 2017年
売上高 96億0794万7000円 258億2152万5000円 1630億6000万0000円 1730億6900万0000円 1543億2900万0000円 1124億5700万0000円 923億0600万0000円
割合 100.00% 100.00% 100.00% 100.00% 100.00% 100.00% 100.00%
RO関連売上高 65億9219万0000円 61億4860万1000円 36億2633万3333円? 23億7033万3333円? 19億1133万3333円? 23億4533万3333円? 29億3666万6667円?
RO関連売上高割合 68.61% 23.81% 2.22%? 1.37%? 1.24%? 2.09%? 3.18%?
パズル&ドラゴンズ関連売上高 - 145億9900万0000円 1485億8400万0000円 1583億2000万0000円 1367億7900万0000円 948億3700万0000円 -
パズル&ドラゴンズ関連売上高割合 - 56.54% 91.12% 91.48% 88.63% 84.33% -
ライセンスの支払いが占める割合(RO関連売上高) 26.85% 32.91% 30.00%? 30.00%? 30.00%? 30.00%? 30.00%?
2013年以降のRO関連売上高は推定値

ガンホー・オンライン・エンターテイメント売り上げ 2018年 2019年
売上高 921億0100万0000円 1013億9200万0000円
割合 100.00% 100.00%
RO関連売上高 28億2733万3333円? 26億9366万6667円?
RO関連売上高割合 3.07%? 2.66%?
パズル&ドラゴンズ関連売上高 - -
パズル&ドラゴンズ関連売上高割合 - -
ライセンスの支払いが占める割合(RO関連売上高) 30.00%? 30.00%?

2.1 ガンホーの来歴

ガンホーの前身は1998年7月1日に発足したオンセール株式会社である。
同社は、2002年8月まで、ネットオークション事業を行っていたが、Yahoo!オークション(現ヤフオク!)などの大手オークションサイトのシェアを奪えず、2002年8月に同事業から撤退する。
当時の社長は、ヤフー株式会社の経営者である孫正義氏の弟である孫泰蔵氏である。
ポータルサイトとしてのYahoo! JAPANのサービス開始は1996年の事であり、Yahoo!オークションのサービス開始は1999年の事である。
オンセールのネットオークション事業は、兄の会社が運営するYahoo!オークションと競合する事業だった筈だが、孫泰蔵氏がこういった事情をどう考えていたのかは分からない。
同社は、2002年8月に商号を現在のガンホーに変更後、韓国のゲーム会社であるグラビティ社よりラグナロクオンラインの日本国内運営権を獲得し、PCオンラインゲーム事業を開始する。
現在のガンホーの社長である森下一喜氏は、この時にガンホーのCOO(最高執行責任者)に就任している。
ラグナロクオンラインの日本国内運営権の獲得は、森下一喜氏の主導したらしい。
孫泰蔵氏は経営者というより、同社に対する安定株主という側面が強かったようだ。

ガンホーはラグナロクオンラインの運営権獲得後、PCオンラインゲーム事業で売上を伸ばし、2005年3月9日に大証ヘラクレス市場(現・ジャスダック)に上場する。
森下一喜氏は、2004年1月に同社の代表取締役社長に就任している。
孫泰蔵氏の役職について、Wayback Machineに保存された過去のガンホーの公式サイトで調べてみたが、2006年から代表取締役会長として、孫泰蔵氏の名前が確認できる。
恐らく、森下一喜氏の代表取締役社長就任と同時に、会長職に退いたものと思われる。
以後、2016年にソフトバンクグループがガンホーの株式を売却するまで、孫泰蔵氏は代表取締役会長を務めている。
ソフトバンクによる株式の売却後、会長職を辞任し、2020年2月にはガンホーの役員も退任している。
孫泰蔵氏とガンホーの関係はここで解消されたのだろう。
ガンホーによるグラビティの子会社化の際、ガンホーにグラビティの株式を提供したのは孫泰蔵氏が代表取締役社長を務める投資会社である。
上記のような経緯を踏まえると、ガンホーのPCオンラインゲーム事業の立ち上げとグラビティの子会社化という大きな変化は、孫泰蔵氏の存在抜きには考えられず、ガンホーが今の姿になるまでの成長に同氏は大きな貢献を行ったと思われる。
2005年の上場以降、ガンホーは順調に売上を伸ばし、2008年にグラビティを買収、2012年にパズル&ドラゴンズをヒットさせ、事業の軸足をモバイルに移しつつ、現在に至っている。

2.2 ガンホーの売上概況

全体的に見て、ガンホーの売上は2005~2016年まで右肩上がりで成長している。
2017年以降は、パズル&ドラゴンズの勢いに陰りが出てきた為、売上も下がっている。
売上のピークは2014年の1730億6900万円である。
ラグナロクオンライン関連の売上は、2012年のパズル&ドラゴンズのヒットがあるまでは、全体の約7割を占めていた。
2016年までは、ガンホーの決算短信には、「事業等のリスク」という項目があり、ここでラグナロクオンライン、パズル&ドラゴンズの売上が全体の何割を占めるかが公開されていた。
2017年以降、この項目が削除された。
ガンホーはセグメント別(モバイル、PCオンラインゲーム事業等)の売上を公開していない。
その為、現在、ラグナロクオンライン、パズル&ドラゴンズ、ラグナロクマスターズといったタイトルの売上が全体に占める割合はガンホーが公開している決算短信からは読み取ることが出来ない。

2.2.1 2005~2012年までのRO関連売上高

ROとの関連で注目したいのは、グラビティ買収前後の2005~2008年の売上である。
この時期のガンホーの売上は、グラビティのそれを大きく上回っている。
2008年のガンホーの売上は112億4105万3000円だったが、同年のグラビティの売上は41億6370万円(4163万7000ドル。1ドル100円として計算)と2倍以上の開きがある。
グラビティは2005年にソフトバンク系の会社に事実上買収され、その株を2008年にガンホーが取得することで同社の子会社になった。
ガンホーがグラビティを買収した背景には、ラグナロクオンラインのライセンスを収入に依存するガンホーがグラビティを子会社にすることで、ラグナロクオンラインの日本国内運営権を確実に確保する意図があった。
ラグナロクオンラインのライセンスは有期契約であり、契約を解約された、あるいは更新がされなかった場合、ガンホーは売上の大半を失う。
2005~2010年までの間に、ラグナロクオンライン関連の売上が全体の7割を下回った時期はない。
ガンホーは2005年の株式上場から、株価も上昇し、会社としても急成長を遂げたが、その成長と価値は外部の取引先が開発した単一のタイトルに大きく依存したものである事は否めない。
こういう事情を踏まえると、ガンホーとその背後にいるソフトバンクグループが、グラビティを買収し、ラグナロクオンラインのライセンスを確実に得られるようにしたのも、もっともなことだろう。

2.2.2 ガンホー売上まとめ

ガンホーの売上の推移を見ると、2011年までは、収入の大半をラグナロクオンラインに依存した状態だった。
2012年にパズル&ドラゴンズのヒットを受け、事業の軸足をPC向けのオンラインゲームからモバイルへとシフトした。
単一のタイトルに売上の大半を依存する状態は変わらないが、これはオンラインゲームという事業の性質を考えると仕方がないのかもしれない。
そのリスクは経営陣は重々分かっているだろう。
子会社であるグラビティが開発したモバイル向けのMMORPGであるRagnarok M(日本での名称はラグナロクマスターズ)を国内でも展開するなどした背景には、タイトルの多角化を図る意図がありそうだ。
競争が激しく、時流に左右されるゲーム業界で一発屋で終わらず、二発目を成功させ、子会社が作ったMMORPGは三発目になり得るポテンシャルを秘めている。
一発屋にすらなれずに消えていく会社が多いことを考えると、時流に上手く乗って、会社を成長させてきたガンホーの経営陣の実績は高く評価されて然るべきだろう。

3. グラビティ売り上げ

グラビティ売り上げ 2004年 2005年 2006年 2007年 2008年 2009年 2010年
売上高 6632万3000ドル 5285万6000ドル 4404万6000ドル 4298万9000ドル 4163万7000ドル 5074万6000ドル 4772万2000ドル
売上高(日本円) 66億3230万0000円 52億8560万0000円 44億0460万0000円 42億9890万0000円 41億6370万0000円 50億7460万0000円 47億7220万0000円
割合 100.00% 100.00% 100.00% 100.00% 100.00% 100.00% 100.00%
前年比 - 79.69% 83.33% 97.60% 96.86% 121.88% 94.04%
モバイルゲームとアプリケーションの売上高 38万7000ドル 164万8000ドル 412万9000ドル 434万2000ドル 538万9000ドル 696万8000ドル 837万4000ドル
モバイルゲームとアプリケーションの売上高(日本円) 3870万0000円 1億6480万0000円 4億1290万0000円 4億3420万0000円 5億3890万0000円 6億9680万0000円 8億3740万0000円
モバイルゲームとアプリケーションの売上高(割合) 0.58% 3.12% 9.37% 10.10% 12.94% 13.73% 17.55%
RO関連売上高 - 3700万5000ドル 2808万9000ドル 2639万2000ドル 3050万0000ドル 3738万5000ドル 3424万4000ドル
RO関連売上高(日本円) - 37億0050万0000円 28億0890万0000円 26億3920万0000円 30億5000万0000円 37億3850万0000円 34億2440万0000円
RO関連売上高割合 - 70.01% 63.77% 61.39% 73.25% 73.67% 71.76%
JROからのライセンス収入 - 967万4000ドル 1654万6000ドル 1907万4000ドル 1826万6000ドル 2483万1000ドル 2245万3000ドル
JROからのライセンス収入(日本円) - 9億6740万0000円 16億5460万0000円 19億0740万0000円 18億2660万0000円 24億8310万0000円 22億4530万0000円
JROからのライセンス収入の割合(売上高) - 18.30% 37.57% 44.37% 43.87% 48.93% 47.05%
JROからのライセンス収入の割合(RO関連売上高) - 26.14% 58.91% 72.27% 59.89% 66.42% 65.57%
2005~2007年のRO関連売上高は他のオンラインゲームの売上を合算したものである

グラビティ売り上げ 2011年 2012年 2013年 2014年 2015年 2016年 2017年
売上高 4961万3000ドル 5434万3000ドル 4518万8000ドル 3656万6000ドル 3049万7000ドル 4269万8000ドル 1億3267万8000ドル
売上高(日本円) 49億6130万0000円 54億3430万0000円 45億1880万0000円 36億5660万0000円 30億4970万0000円 42億6980万0000円 132億6780万0000円
割合 100.00% 100.00% 100.00% 100.00% 100.00% 100.00% 100.00%
前年比 103.96% 109.53% 83.15% 80.92% 83.40% 140.01% 310.74%
モバイルゲームとアプリケーションの売上高 802万2000ドル 1074万4000ドル 1374万5000ドル 1380万1000ドル 1289万5000ドル 1000万3000ドル 7740万6000ドル
モバイルゲームとアプリケーションの売上高(日本円) 8億0220万0000円 10億7440万0000円 13億7450万0000円 13億8010万0000円 12億8950万0000円 10億0030万0000円 77億4060万0000円
モバイルゲームとアプリケーションの売上高(割合) 16.17% 19.77% 30.42% 37.74% 42.28% 23.43% 58.34%
RO関連売上高 3276万9000ドル 3038万6000ドル 2040万3000ドル 1465万3000ドル 1266万0000ドル 2446万1000ドル 3511万6000ドル
RO関連売上高(日本円) 32億7690万0000円 30億3860万0000円 20億4030万0000円 14億6530万0000円 12億6600万0000円 24億4610万0000円 35億1160万0000円
RO関連売上高割合 66.05% 55.92% 45.15% 40.07% 41.51% 57.29% 26.47%
JROからのライセンス収入 1926万6000ドル 2023万4000ドル 1087万9000ドル 711万1000ドル 573万4000ドル 703万6000ドル 881万0000ドル
JROからのライセンス収入(日本円) 19億2660万0000円 20億2340万0000円 10億8790万0000円 7億1110万0000円 5億7340万0000円 7億0360万0000円 8億8100万0000円
JROからのライセンス収入の割合(売上高) 38.83% 37.23% 24.07% 19.45% 18.80% 16.48% 6.64%
JROからのライセンス収入の割合(RO関連売上高) 58.79% 66.59% 53.32% 48.53% 45.29% 28.76% 25.09%

グラビティ売り上げ 2018年 2019年
売上高 2億5769万0000ドル 3億1240万1000ドル
売上高(日本円) 257億6900万0000円 312億4010万0000円
割合 100.00% 100.00%
前年比 194.22% 121.23%
モバイルゲームとアプリケーションの売上高 2億1520万3000ドル 2億6128万4000ドル
モバイルゲームとアプリケーションの売上高(日本円) 215億2030万0000円 261億2840万0000円
モバイルゲームとアプリケーションの売上高(割合) 83.51% 83.64%
RO関連売上高 2875万0000ドル 3289万8000ドル
RO関連売上高(日本円) 28億7500万0000円 32億8980万0000円
RO関連売上高割合 11.16% 10.53%
JROからのライセンス収入 848万2000ドル 808万1000ドル
JROからのライセンス収入(日本円) 8億4820万0000円 8億0810万0000円
JROからのライセンス収入の割合(売上高) 3.29% 2.59%
JROからのライセンス収入の割合(RO関連売上高) 29.50% 24.56%

3.1 グラビティの来歴

グラビティは、創業者である金学奎氏が1998年に「Gravity soft」として設立した。
金学奎氏が学生時代に作った同人ソフトサークルの名称も「Team Gravity」である為、初期のメンバーなどに繋がりがあるのかもしれない。
Wayback Machineで調べた所、「Team Gravity」の名称は、2000年のグラビティ公式サイトの社歴のページでも確認できる。
1999年にはWindows用RPGであるアークトゥルスを制作している。
このRPGは3Dのフィールドに2Dのキャラクターが動くというシステムで、一部のテクスチャなどはラグナロクオンラインにも流用されたらしい。
2000年にグラビティは李命進氏と「RAGNAROK INTO THE ABYSS」のゲーム化について契約を交わし、ラグナロクオンラインの開発を開始した。
この企画は李命進氏からの持ち込みだったらしい。韓国でのインタビュー記事によると、李命進氏はラグナロクオンラインに原作者としてだけでなく、企画、デザインの面で開発に参加していたとのことだ。
「RAGNAROK INTO THE ABYSS」の連載は、2002年6月に休載しているが、これは李命進氏がオンラインゲームの企画で多忙になったことが理由のようだ。
同氏はその後、ラグナロクオンライン2の原作も務めている。
ラグナロクオンラインの開発の開始時期については、詳しいことは分からない。
2000年9月のグラビティの求人のページで、Windowsでのネットワークプログラミングについて知識を備えたプログラマの募集を行っている。
その為、少なくとも、この時点でラグナロクオンラインの開発については確定していたものと思われる。
2000年4月の段階のグラビティの公式サイトにはそういった記述がない。2000年4~8月の期間については、Wayback Machineでもグラビティの公式サイトは保存されていなかった。
以上のことから、ラグナロクオンラインの開発開始時期は、2000年4~9月と推測できる。
ラグナロクオンラインのαテスト開始は2001年3月の事なので、半年か1年弱の期間でラグナロクオンラインのα版は制作されたことになる。
また2001年3月のグラビティの公式サイトの会社紹介のページで、スタッフの一覧が確認できる。
今現在、こういう情報を公開すると色々と差し障りがありそうだが、当時と今では事情も違い、そういった情報を公開する事に抵抗はなかったのだろう。

gravity

company info

このスタッフ一覧によると、当時のグラビティには、開発1チーム、開発2チームの2つの開発チームが存在した事が分かる。
開発1チームの人数は5名、開発2チームの人数は9名である。
推測になるが、2つのチームに分かれて、ラグナロクオンラインのクライアント、サーバプログラムの開発を行っていたのではないだろうか。
この様な状況を整理すると、ラグナロクオンラインの基礎となるシステムは、非常に限られた人員と期間で行われていたことが分かる。
比較の為紹介するが、同じ時期に開発されたMMORPGであるファイナルファンタジーXIは、150人以上の開発者が2年掛けて開発を行ったらしい。サービス開始までのコストは開発費だけで30億円、通信、サーバ等のインフラにも30億円のコストが掛かっている。
ソフトウェア開発は、頭数が多ければ、優れたシステムが出来るというものではない。しかし、マップやモンスターなどのコンテンツの部分はマンパワーが要求され、コストによる差が顕著に現れる。
ラグナロクオンラインは、当初、色々と作りの甘さを指摘する声があったが、こういう組織の体制や開発期間を考慮すると、話は全く違ってくるのではないだろうか。
2020年現在であれば、ネットワークゲームの開発のノウハウなどが書かれた参考書が多く出版されているが、2000年当時はそういった情報は遥かに少なかった筈だ。
ウルティマオンラインやエバークエストといった先行した事例が海外にあったとはいえ、MMORPGそのものが黎明期だった事を踏まえると、情報の入手などは難しかっただろう。
グラビティは、14人程度の開発チームが半年から1年の時間で、スキル等は未実装だがゲームをユーザーに提示できるα版まで形にした。
その後、α版からスキル等々のシステムを肉付けしたβ版、その後、正式サービス開始まで漕ぎ着けている。
2000年代初頭、JROの運営には様々な問題があり、それを指摘する記事は現在でもWebに残っている。
その指摘の内容には、サーバが不安定でゲームに支障がある、精錬にバグがあり、異常に強いキャラクターが作れてしまう、BOT、DUPE、チートが蔓延しているという物があった。
そういう問題は確かに存在したが、開発の体制や投入されたリソースを考えると、問題に適切に対処できなかったのも仕方がない気がする。
恐らく、FF11の様なタイトルと比較することは適当ではないだろう。投入されたリソースが違いすぎるので、サービスの質に差が出るのは当然の成り行きだ。
こういった事情は内輪の話であって、一般のユーザーには関係がないという指摘は当然あると思うが、限られたリソースを考えると良く健闘したと見るべきだろう。
JROには、長い間、BOTの蔓延が放置されたという問題もあるが、それはガンホーがラグナロクオンラインの運営権を取得して以降の話であるので、また別の話である。
2020年現在、JROの根本的なシステムが当時と変わっているとは思えない。
この開発チームは限られたリソースで、20年の長きに渡り、サービスが継続しているシステムの基礎を作った。
その仕事の成果は、現在の効果を継続している。当時のグラビティ開発チームの手腕は高く評価されて叱るべきだろう。
余談だが、2005年のグラビティの年次報告書によると、2003年当時の従業員は251人(開発者225人)、2004年は399人(開発者357人)、2005年は507人(開発者443人)と大幅に増加している。
2002年2月にサムスン電子との間に投資に関する契約を結んだらしいので、それ以降、従業員の採用に必要な資金が調達できたのだろう。
2001年11月29日、日本でラグナロクオンラインのβ1テストが開始され、ここからJROの歴史が始まる。
2002年7月にガンホーとの間に日本国内での独占配信、販売権の契約を結ぶ。
その後、2002年8月に韓国でKROの正式サービス開始、2002年12月のJRO正式サービス開始、2003年4月の北米でのIROの正式サービスを開始を経て、グラビティは2005年2月に米国のNASDAQ市場に上場を果たす。
その後、経営者の交代などの人事の異動があり、2005年8月にソフトバンクグループの企業に400億円で事実上買収される。
2008年にガンホー代表取締役会長の孫泰蔵氏が代表取締役社長を務める投資会社から、ガンホーが株式を取得し、グラビティを子会社化した。
その後、ラグナロクオンライン2、レクイエムオンライン等のオンラインゲームを手掛けるが、ラグナロクオンラインに変わる収益の柱とする事は出来なかった。
同社の売上は2004年をピークに長い間低迷を続けるが、2017年にRagnarok M(日本での名称はラグナロクマスターズ)のリリース後、これをヒットさせる。
2017年には売上を1億3267万8000ドル(2004年の売上は6632万3000ドル)に伸ばし、2018年には2億5769万ドル、2019年には3億1240万1000ドルと売上を順調に伸ばし、快進撃を続け、現在に至っている。

3.2 2004~2019年までの売上

グラビティの過去の売上を見ると、長い間、2004年がピークで2017年までは長い低迷が続いていた。
これはラグナロクオンラインに続くタイトルを出せなかったことが原因だろう。
ラグナロクオンラインのオープンβテストが行われた2001年は、競合となるタイトルが少なく、ラグナロクオンラインは大きなヒットを飛ばすことが出来た。
しかし、それ以降は競合となるタイトルも増え、ネットゲームの普及期を過ぎて、ユーザーの目も肥えたことも影響したのか、長い間、後継となるタイトルを生み出すことが出来なかった。
この長い低迷を抜けるには、モバイル向けのMMORPGであるRagnarok Mのサービスが開始する2017年まで待たなければならなかった。
グラビティはラグナロクオンラインという過去の遺産に、売上のかなりの割合を依存する状態が続いていたが、2017年以降はRagnarok M関連の売上を伸ばし、PCオンラインゲームからモバイルへと売上をシフトすることに成功している。

3.3 JROライセンス収入への依存、ガンホー・オンライン・エンターテイメントとの売上の逆転現象

2006~2007年までの数字は注目に値する
この時期のグラビティの売上の60~70%がラグナロクオンライン関連であるが、その内訳を見るとJROからのライセンス収入が占める割合が非常に高い。
2007年には、JROからのライセンス収入は売上高全体の44.37%、ラグナロクオンライン関連売上高全体の72.27%を占めている。
ガンホーという単一の取引先に、売上の40%以上を占める状態は、2010年まで続いている。
またガンホーとの売上の逆転現象も2005年から続いている。
ガンホーはライセンシーである為、売上の一部を払えば、ラグナロクオンラインのサービスを運営できる。
具体的な数字は不明だが、JROの売上がガンホーの決算短信で確認できる2012年までの間、グラビティに支払われたライセンス料は大体30%程度である。
上記の表は1ドル100円で計算しているので、実際には為替相場の影響などで若干数字が前後している筈だ。
会社の売上の内、特許などの知的財産の貢献は全体の25%程度と評価する経験則があるらしい(ルール・オブ・サム法)。
ラグナロクオンラインのライセンス料の割合も、30%程度なので、この評価法を適応しているものと推測できる。
その為、ラグナロクオンライン関連の売上が幾らになろうと、ガンホーはグラビティに売上の30%程度の金額を支払えばいい。
日本は韓国に比べ、ゲーム市場の規模も大きく、ネットゲームの普及期にラグナロクオンラインを投入したことで多くの売上を上げることが出来た。
その反面、グラビティが自社で提供しているラグナロクオンラインのサービスは、韓国と北米のみという状況が長く続いた為、ガンホーに売上を逆転されるという現象を招いた。

この売上の逆転が、ガンホーによるグラビティの買収の背景になったことは明らかだ。
日本でのラグナロクオンラインの展開を他社に任せず、自社で現地法人を作って、サービスを展開していれば、買収されなかったと考えることも可能だが、それは後知恵だろう。
3.1で書いた通り、2001年当時のグラビティは、開発者30人程度の中小のソフトハウスであったと推測できる。
ネットゲームの開発と運営は別の話で、ゲームは実用的な製品と違い、感性に訴える比重が高い。
その為、サービスを展開する地域の文化、感覚、事情に精通している人間が指揮を執る必要があるが、それは現地の人間でないと難しいのではないだろうか。
それを自社でやるのであれば、韓国、日本の双方の文化、商習慣、法規制などを理解し、日韓双方の組織の間を仲立ちできる人間が必要になるだろうが、そういった高度な能力を持つ人材を調達することは、2001年当時のグラビティには困難だったと思われる。
そもそも、海外へのゲーム企業の進出は難しい。日本でもミクシィやGREEが自社のタイトルを海外に展開したことがあったが、ミクシィのモンスターストライクの北米版の提供が2017年に終了するなど、いずれも成功したとは言い難い。
2001年当時のグラビティと比較して、資金面など遥かに有利な条件で望んだ日本のソーシャルゲーム会社でもこの様な結果に終わったことを踏まえると、グラビティが取れる選択肢は、自社のタイトルの海外進出を現地の会社に任せ、売上の3割程度をライセンス料として得るという方法しかなかったのではないだろうか。
また理屈の上では、ガンホーに買収される前に他のライセンシーにラグナロクオンラインのライセンスを付与したり、自社でサービスを提供する体制に切り替えることでガンホーに買収されるというシナリオを回避できたかもしれない。
ただ、ラグナロクオンラインはMMORPGというジャンルのゲームであることを踏まえると、それも難しいと思われる。
MMORPGはキャラクターのレベルや装備などのゲーム内資産が、ユーザー体験の質を左右している。
ガンホー以外の会社にライセンスを付与する、あるいは自社でサービスを提供するのであれば、キャラクターやアイテムなどのユーザー情報の引き継ぎはスムーズな移行に必須だろう。
しかし、その様な動きをグラビティが見せた場合、売上の大半をラグナロクオンラインに依存するガンホーが積極的に協力するとは考えにくく、年単位の時間を掛けて築いたゲーム内資産の引き継ぎがされないのであれば、ユーザーからの支持も得られないだろう。
そういう思い切った手を打った後、売上が維持できたかは正直疑問の残るところで、下手な始末をすると収入の40%を占めるJROのサービスを殺し、得るものが何もないという結果に終わりかねない。
JROからのライセンス収入に売上の40%以上を頼る状況で、そういった動きを強引に進める事はあまりにリスクが高く、現実的には難しかったのではないだろうか。

2007年当時、ガンホーは売上の75%程度をラグナロクオンラインというタイトルに依存し、グラビティは売上の43%程度をガンホーという一つのライセンシーに頼っていた。
またラグナロクオンラインはサービスの展開地域こそ、東アジア、北米、欧州、南米と幅広いが、売上という実体で評価すると東アジアの日中韓の三カ国の売上が全体の80%を占めている。この状況は2000年代初頭から現在まで変わっていない。
東アジアの以外の地域からライセンス収入が上がっていれば、また話は違ったかもしれない。
余談だが、2019年度のグラビティのRagnarok Mなどのモバイル関連の地域別の売上は、東アジアは25%程度、その他の地域の合計が75%程度である。
この様な状況を踏まえると、当事者の思いがどうであれ、ガンホーとグラビティは一蓮托生の関係にあったと言っても過言ではないだろう。
相互に依存し合った関係を踏まえると、2008年のガンホーによるグラビティの子会社化がなくても、何らかの形で両社が一体の存在となる事は避けられなかったのではないだろうか。

3.4 グラビティ売上まとめ

グラビティは、株式の上場以来、長い間低迷が続き、ラグナロクオンラインという過去の遺産に依存した状態が続いていた。
2017年にRagnarok Mというヒット作によって、その状態から抜け出した。
単一のタイトルに収入の大半を依存する状態は変わらないが、これは親会社のガンホーも同じである。
グラビティは、今後、ラグナロクオンラインの知的財産を活用したRagnarok ORIGIN、Ragnarok X:Next Generationといった新タイトルのMMORPGをリリースするらしい。
Ragnarok Mと競合するサービスになると思うのだが、どう棲み分けていくつもりなのかは、今後、明らかになるだろう。

4. ユーザー一人あたりの売上

JROのユーザー一人当たりの売上 2004年 2005年 2006年 2007年 2008年 2009年 2010年
JROのユーザー一人当たりの売上 - 6万2828円 6万4102円 9万1876円 12万5982円 14万7232円 16万3587円
JROユーザー数 - 73,751 78,053 61,800 58,171 52,585 43,869

JROのユーザー一人当たりの売上 2011年 2012年 2013年 2014年 2015年 2016年 2017年
JROのユーザー一人当たりの売上 18万4085円 19万0536円 18万5519円 14万0915円 12万8502円 17万8149円 26万0944円
JROユーザー数 38,984 32,270 19,547 16,821 14,874 13,165 11,254

JROのユーザー一人当たりの売上 2018年 2019年
JROのユーザー一人当たりの売上 28万8356円 29万4261円
JROユーザー数 9,805 9,154

4.1 1年間の接続料金

現在、ラグナロクオンラインの接続料金は30日で1500円である。
1年間の接続料金は、単純計算で18000円になる。
ユーザー一人当たりの売上には、この数字も含まれる為、ラグ缶等の売上を推測する場合、考慮する必要がある。s

4.2 課金アイテムの開始時期

パッケージ版の提供は、2003年に行われたものが最初だと思われる。
アイテムチケットをパッケージ版に含める試みは、恐らく、2005年12月発売の「ラグナロクオンライン プレミアムパッケージ~古く青い箱パック~」が最初の例になるだろう。
いわゆるガチャの提供は、2006年6月のガンホーオンラインショップで提供されたガンくじからだと思われる。

『ラグナロクオンライン』パッケージ版発売!プレイチケットやスペシャルブックを同梱 - 電撃オンライン

2003/11/11 20:40:05 / 「ラグナロクオンライン」のコンビニ販売パッケージがリニューアル

ガンホー、MMORPG「ラグナロクオンライン」、3周年記念パッケージ発売。新頭装備のアイテムチケット同梱

「ガンホーオンラインショップ」本日4月24日リニューアルオープン

4.3 ユーザー数は減少しているが、一人当たりの売上は増加傾向

2005年のユーザー一人当たりの売上は6万円前後だが、当時からアイテムチケットを目当てにパッケージを複数購入した人がいたのだろう。
時間の経過とともに、ラグナロクオンラインのユーザー数は緩やかに減っているが、一人当たりの売上は上昇している。
これはラグ缶などのガチャで売上を伸ばしたものと思われる。2014年以降、究極精錬という一定額を課金すれば、ペナルティ無しで精錬を試みることが出来るイベントの開催なども行っている為、その売上も含まれるだろう。
ユーザー一人当たりの売上が上昇している背景は、そういったガンホーからの試みに加え、ユーザーの平均年齢と年収が上昇し、一人当たりの可処分所得が増えたことも要因と考えられる。
現在のラグナロクオンラインは、昔からのユーザーか、一旦引退したユーザーが復帰したというユーザーが占める割合が恐らく高い。
具体的な数字はガンホーにしか分からないだろうが、PC向けのレガシーなMMORPGに10代の若いユーザーが殺到するという状況は考えにくい。
2019年の一人当たりの売上は、29万円程度である。この数字から接続料金を引いて、毎月の課金額は2万3000円程度になるだろう。
この数字なら何とか成り立ちそうではあるが、これはあくまでも平均である。
ネットゲームのユーザーの課金額の分布は、毎月1万円以上の課金をするのは全体の20%という調査結果もある。
ラグナロクオンラインでも、毎月の接続料金だけ課金し、ラグ缶などは引かないというユーザーもそれなりのボリュームを占めるだろう。
その為、これ以上、一人当たりの売上を伸ばすことは難しいかもしれない。

5. まとめ

今回、ガンホー、グラビティの過去の売上、来歴等について、調査記事をまとめた。
ラグナロクオンラインの開発は2000年に行われているので、既に20年も前のことである。
その為、既にWeb上から失われている情報やGoogle等の検索エンジンでは簡単に調べられない記事も多く、一部は推測による記述としなければならなかった。
こういった過去の経緯は、何もせずにいるといずれ失われる可能性がある。
2000年当初、ラグナロクオンラインのファンサイトは、ジオシティーズなどの無料のホスティングサーバで運営されている事が多かったが、インターネット上のコミュニケーションに使われるサービスの変遷により、これらのサービスは採算が取れなくなり、サービスの終了、閉鎖が相次いでいる。
ビジネス向けメディアの記事などについても、採算面で苦境に立っているサービスも多いそうなので、情報が失われる可能性はゼロではない。
ラグナロクオンラインの現在は、過去の様々な経緯を経た上の姿である。
この様な情報を整理することで、現在のラグナロクオンラインの姿を正確に認識し、未来への姿を考える材料を提供できれば幸いである。

今回の記事は以上です。少し長々とした記事になってしまいました。
グラビティの来歴の記事などは筆が滑りすぎたかもしれません。ただ、上でも書いた通り、過去の経緯を知ることで現在のJROの状態をより知ることが出来るのではないでしょうか。
ちょっと堅苦し記事が続いてしまったので、次回はもっと軽めの記事を投稿してみます。

今回はここまでします。それでは。

参考資料
ガンホー・オンライン・エンターテイメント - Wikipedia

沿革|ガンホー・オンライン・エンターテイメント株式会社

孫泰蔵 - Wikipedia

森下一喜 - Wikipedia

森下 一喜さん-プロ論。-/リクナビNEXT[転職サイト]

ジブリもピクサーも、「パズドラ」のライバル | ゲーム・エンタメ | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準

Wayback Machine

ウェイバックマシン - Wikipedia

ソフトバンク、ガンホー株の9割売却へ 730億円で  :日本経済新聞

ガンホーの孫泰蔵氏、会長職を退任へ 本人が希望:朝日新聞デジタル

【人事】孫泰蔵氏、ガンホー役員を退任 田中晋氏の社外取締役就任が内定 | Social Game Info

ガンホー、韓国Gravityを子会社化。「ラグナロクオンライン」シリーズのライセンスを確保

Gravityをソフトバンク系企業が,400億円で事実上の買収

GRAVITY OFFICIAL - | ABOUT GRAVITY | Company Information

金学奎 - Wikipedia

グラビティ (ゲーム会社) - Wikipedia

ラグナロク (漫画) - Wikipedia

李命進 - Wikipedia

日本のラグナロクオンライン - Wikipedia

ウェブ文化から見たラグナロクオンラインの歴史 < 佐倉葉ウェブ文化研究室

ラグナロクの歴史

JANOG12- Special session in N+I 2003

FF11 - ファイナルファンタジーXI 最新情報

スマホゲーム市場、8.9%増の1兆290億円に拡大、30代・40代の平均課金額は月4,324円:MONEYzine:資産運用とお金のこと、もっと身近に

こんにちは。
新型コロナウイルス感染症が世界的に流行していますが、閲覧者の皆様はいかがお過ごしでしょうか。
現在、日本政府による緊急事態宣言が発令されています。閲覧者の方も健康に気を付けて、この危機を乗り切っていけることを祈ります。
この感染症の影響なのかは明言されていませんが、4月の精錬祭が延期になるなど、ラグナロクオンラインのゲーム内でも影響が出てきているようです。

4月のイベント、アップデートスケジュール一部変更のお知らせ| ラグナロクオンライン公式サイト

日本政府による緊急事態宣言も5月末まで延長された事もあり、予定されていたイベントは今後は延期や中止といった事があるかもしれません。
暗い話題ですが、日本国内で展開されているサービスである以上、国内の情勢によって、影響を受けることは避けられないでしょう。
今後どうなるかは分かりませんが、夏ぐらいには正常な状態に戻ることを期待したいと思います。
01
それとは話は変わりますが、毎年4月の最終週はグラビティの年次報告書が公開される時期でもあります。
グラビティは言うまでもなく、ラグナロクオンラインの開発会社なのですが、同社は米国のNASDAQ市場に上場している為、投資家向けの広報活動であるIRも盛んに行っています。
この年次報告書には、グラビティによって、ラグナロクオンライン関連の情報が多く公開されています。
日本でラグナロクオンラインのサービスを展開しているのは、ガンホー・オンライン・エンターテイメントですが、同社は2013年以降、PCオンライン事業の数字を公開しなくなりました。
ガンホーがラグナロクオンラインに関する情報を開示しなくなった理由は、2013年以降、パズドラのヒットにより、ROが売上に占める割合が急減した事が理由でしょう。
その為、グラビティの年次報告書が、ラグナロクオンラインの現状を把握するのに一番詳しい資料であると言えるでしょう。
今回は去年に引き続き、グラビティの年次報告書の中から、ラグナロクオンラインに関係する記述を紹介し、同ゲームを取り巻く環境を整理していきたいと思います。
過去に書いた同様の記事は、このブログの下記のカテゴリにまとめてあるので、ご興味ある方はご覧いただけると幸いです。

グラビティ、ガンホー : RO Breidablik 日記(仮)

1. 文書作成の目的

この文書は、グラビティの2019年度の年次報告書の内容を検討し、ラグナロクオンラインに関する現状の情報を整理し、紹介する目的で執筆する。
この文書内では、従来から存在するラグナロクオンラインをPC版ラグナロクオンラインと呼称する。
また、ラグナロクオンラインの知的財産を元にモバイル向けに開発されたグラビティのMMORPGをRagnarok Mと呼称し、前者と区別する。
この文書の表では、比較の為、Ragnarok Mのサービスが開始される前の2016年からの数字を掲載する。

2. グラビティの2019年度の売上等の情報について

グラビティは米国のNASDAQ市場に上場している為、IRで積極的に情報を公開している。
特に毎年4月末に公表される年次報告書は、前年の同社の事業の総括として出される為、その中にはラグナロクオンラインの事情に関する情報が多く含まれている。
今回は先日公表された2019年の年次報告書からラグナロクオンラインに関係する情報を整理し、紹介する。

[20-F] 2019 Annual Report

GRAVITY OFFICIAL - | SEC Filings

2.1 グラビティ全体の売上

グラビティの2019年の総収入(売上高)は、3億1240万1000ドルである。
前年に比べ、121.23%であり、増収増益となっている。
売上高の伸びは鈍化しつつあるが、相変わらず堅調である。
鈍化の理由は、2017年にサービスを開始したRagnarok Mの勢いが下がっているからだと思われるが、これも事業の性質を考えると、健闘していると言えるのではないだろうか。
売上の内、モバイル関連の売上が83.64%と大半を占めている。
後述するが、これはRagnarok M関連の売上が大半を占めている。
2016年以前は、ラグナロクオンライン関連の売上が売上の大半を占めていたが、グラビティは事業の軸足をモバイルへと移行したことが伺える。
1つのタイトルに収益の大半を依存する状態には代わりはないが、これもオンラインゲームという事業の性質の結果と見るべきではないだろうか。
尚、この表の日本円の売上は1ドル100円で計算した為、実際の数字は上下する可能性がある。

グラビティ売り上げ 2016年 2017年 2018年 2019年
売上高 4269万8000ドル 1億3267万8000ドル 2億5769万0000ドル 3億1240万1000ドル
売上高(日本円) 42億6980万0000円 132億6780万0000円 257億6900万0000円 312億4010万0000円
割合 100.00% 100.00% 100.00% 100.00%
前年比 140.01% 310.74% 194.22% 121.23%
モバイルゲームとアプリケーションの売上高 1000万3000ドル 7740万6000ドル 2億1520万3000ドル 2億6128万4000ドル
モバイルゲームとアプリケーションの売上高(日本円) 10億0030万0000円 77億4060万0000円 215億2030万0000円 261億2840万0000円
モバイルゲームとアプリケーションの売上高(割合) 23.43% 58.34% 83.51% 83.64%
RO関連売上高 2446万1000ドル 3511万6000ドル 2875万0000ドル 3289万8000ドル
RO関連売上高(日本円) 24億4610万0000円 35億1160万0000円 28億7500万0000円 32億8980万0000円
RO関連売上高割合 57.29% 26.47% 11.16% 10.53%
JROからのライセンス収入 703万6000ドル 881万0000ドル 848万2000ドル 808万1000ドル
JROからのライセンス収入(日本円) 7億0360万0000円 8億8100万0000円 8億4820万0000円 8億0810万0000円
JROからのライセンス収入の割合(売上高) 16.48% 6.64% 3.29% 2.59%
JROからのライセンス収入の割合(RO関連売上高) 28.76% 25.09% 29.50% 24.56%

2.2 PC版ラグナロクオンライン概況

PC版ラグナロクオンラインの国別の売上と売上に占める割合は下記の通りである。
台湾・香港・マカオ、韓国、アメリカ・カナダはグラビティがサービスを提供している為、サブスクリプション収入はグラビティに直接入る。
ブラジル、インドネシアがサブスクリプション収入に入っているが、これは現地のライセンシーのサービスが終了し、その後、グラビティの子会社によって、サービスが運営されている為である。
それ以外の国と地域は、現地のライセンシーが運営し、ライセンス料などをグラビティに支払っている。
2019年の売上高は、3289万8000ドルである。

2.3 PC版ラグナロクオンラインが全体に占める割合

2019年の売上高は、3289万8000ドルである。これはグラビティ全体の売上の約10%である。
2016年度以降、売上全体に占める割合は下がり続けている。
割合としては小さくなったが、PC版ラグナロクオンライン関連の売上高は3000万ドル以上と無視できない数字になっている。
2016年以降、上下しつつも3000万ドル程度の数字で推移している。

PC版ラグナロクオンラインの売上と全体に占める割合 2016年 2017年 2018年 2019年
売上高 2446万1000ドル 3511万6000ドル 2875万0000ドル 3289万8000ドル
割合 57.29% 26.47% 11.16% 10.53%

2.4 PC版ラグナロクオンラインの各国別売上

PC版ラグナロクオンラインの日本からのライセンス収入は、808万1000ドルである。
この数字を1ドル100円として、日本円に直すと8億810万円となる。
前年と比べて下がっているが、大幅に下がったという程ではない。
PC版ラグナロクオンラインの売上高の内、24.56%をJROからのライセンス収入が占めている。
この数字は全世界で2位である。1位は台湾・香港・マカオの1470万3000ドルである。
売上の大半を日中韓の3カ国で生み出されているという事情は去年と変化がない。
売上の割合で評価すると、PC版ラグナロクオンラインは、東アジアをベースに展開されるローカルなMMORPGであると言えるだろう。
ここで中華人民共和国、中華民国(台湾)を区別せずにまとめたが、これは何かを意図してものではない。
このブログは東アジアの政治問題を取り扱うものではないので、台湾が独立国なのか、中華人民共和国の一部であるのかといった問題にはこれ以上は触れない。

PC版ラグナロクオンラインの国別の売上 2016年 2017年 2018年 2019年
台湾・香港・マカオ 915万4000ドル 1414万1000ドル 875万7000ドル 1470万3000ドル
韓国 359万9000ドル 455万5000ドル 597万1000ドル 537万5000ドル
アメリカ・カナダ 180万9000ドル 300万5000ドル 255万2000ドル 120万0000ドル
ブラジル - - - 175万8000ドル
インドネシア - - - 40万7000ドル
サブスクリプション小計 1456万2000ドル 2170万1000ドル 1728万0000ドル 2344万3000ドル
日本 703万6000ドル 881万0000ドル 848万2000ドル 808万1000ドル
台湾・香港・マカオ 42万1000ドル - - -
タイ 179万9000ドル 189万8000ドル 127万9000ドル 65万8000ドル
ブラジル 43万9000ドル 81万2000ドル 57万6000ドル -
フィリピン - 82万7000ドル 47万9000ドル 31万5000ドル
インドネシア 8万8000ドル 66万6000ドル 20万7000ドル 5万4000ドル
ヨーロッパ 11万6000ドル 12万6000ドル 7万9000ドル 4万3000ドル
その他 - 27万6000ドル 36万8000ドル 30万4000ドル
ライセンス収入小計 989万9000ドル 1341万5000ドル 1147万0000ドル 945万5000ドル
合計 2446万1000ドル 3511万6000ドル 2875万0000ドル 3289万8000ドル
中国・韓国・北米はグラビティ直営
その他の地域は現地のライセンシーが運営し、ライセンス料を支払う

PC版ラグナロクオンラインの国別の売上に占める割合 2016年 2017年 2018年 2019年
台湾・香港・マカオ 37.42% 40.27% 30.46% 44.69%
韓国 14.71% 12.97% 20.77% 16.34%
アメリカ・カナダ 7.40% 8.56% 8.88% 3.65%
ブラジル - - - 5.34%
インドネシア - - - 1.24%
サブスクリプション小計 59.53% 61.80% 60.10% 71.26%
日本 28.76% 25.09% 29.50% 24.56%
台湾・香港・マカオ 1.72% - - -
タイ 7.35% 5.40% 4.45% 2.00%
ブラジル 1.79% 2.31% 2.00% -
フィリピン - 2.36% 1.67% 0.96%
インドネシア 0.36% 1.90% 0.72% 0.16%
ヨーロッパ 0.47% 0.36% 0.27% 0.13%
その他 - 0.79% 1.28% 0.92%
ライセンス収入小計 40.47% 38.20% 39.90% 28.74%
合計 100.00% 100.00% 100.00% 100.00%

PC版ラグナロクオンラインの国別の売上に占める割合 2016年 2017年 2018年 2019年
東アジア(日本・中国・韓国) 83% 78% 81% 86%
それ以外の地域 17% 22% 19% 14%

2.5 日本のラグナロクオンラインの売上高についての推測

PC版ラグナロクオンラインの日本での売上高については、2013年までガンホー・オンライン・エンターテイメントの決算資料で具体的な数字が公表されていたが、それ以降は記載がない。
2013年までの実績では、RO関連の売上の約30%がガンホーからグラビティへライセンス料として支払われている事が分かる。
売上とライセンス料の数字については、為替相場などの影響からか計算してみると30%にはならない為、この数字も推測である。
グラビティの日本からのライセンス収入を以前と変わらず30%として考え、これを100%に直した数字を、ガンホーのRO関連の売上と仮定し、数字を出す。
その場合、ガンホーのRO関連の売上は、26億9366万6667円となる。

ガンホー・オンライン・エンターテイメント売り上げ 2016年 2017年 2018年 2019年
売上高 1124億5700万0000円 923億0600万0000円 921億0100万0000円 1013億9200万0000円
割合 100.00% 100.00% 100.00% 100.00%
RO関連売上高 23億4533万3333円? 29億3666万6667円? 28億2733万3333円? 26億9366万6667円?
割合 2.09%? 3.18%? 3.07%? 2.66%?
ライセンスの支払いが占める割合 30.00%? 30.00%? 30.00%? 30.00%?

この数字はあくまでも推測である。
過去に支払われたライセンス料の売上に対する割合と日本からのライセンス収入から計算した。
ただ、他のライセンシーとの関係、親会社と子会社の取引という事情を考えると、30%という数字を安易に動かせるとは思えず、これに近い数字なのではないかと推測する次第である。
余談だが、この数字はガンホー全体の売上の2.66%程度である。

決算短信|ガンホー・オンライン・エンターテイメント株式会社

2019年12月期 決算短信〔日本基準〕(連結)

ガンホー、2019年12月期は『パズドラ』好調を受けて増収増益 売上高は10%増の1013億円と大台回復、営業益も6.7%増の283億円に | Social Game Info

2.6 PC版ラグナロクオンラインのユーザー数について

グラビティの集計よれば、PC版ラグナロクオンラインの主要国のユーザー数は、40,951人である。
この場合の主要国は、日本、大韓民国、台湾、アメリカ合衆国である。中華人民共和国本土のユーザー数は、2010年までしか公表されてない。
前年は31,247人であった為、ユーザー数は増加している。日本のユーザー数は昨年と変わらずに減少傾向にある。
ユーザー数の増加が増加している地域は、韓国、台湾・香港・マカオ、北米である。
ユーザー数が増加した理由は不明だが、Ragnarok:Zeroなどのクラシック版ROを展開した地域と符合する。
その為、これらの施策がユーザー数の増加につながった可能性が考えられる。

ROユーザー数推移 2016 2017 2018 2019
主要国数 4 4 4 4
主要国合計(PCU) 50,131 45,438 31,247 40,951
主要国合計(ACU) 29,060 24,004 16,383 21,906
東アジア合計(PCU) 43,729 39,074 27,955 34,195
東アジア合計(ACU) 23,710 18,579 13,787 17,709
東アジア割合(PCU) 87.23% 85.99% 89.46% 83.50%
日米韓(PCU) 17,653 22,691 14,927 17,221
日米韓(ACU) 7,943 10,685 7,567 7,991
日米韓割合(PCU) 35.21% 49.94% 47.77% 42.05%
日本(PCU) 13,165 11,254 9,805 9,154
日本(ACU) 5,136 4,643 4,454 3,977
日本割合(PCU) 26.26% 24.77% 31.38% 22.35%
韓国(PCU) 4,488 11,437 5,122 8,067
韓国(ACU) 2,807 6,042 3,113 4,014
韓国割合(PCU) 8.95% 25.17% 16.39% 19.70%
北米(PCU) 6,402 6,364 3,292 6,756
北米(ACU) 5,350 5,425 2,596 4,197
北米割合(PCU) 12.77% 14.01% 10.54% 16.50%
台湾・香港・マカオ(PCU) 26,076 16,383 13,028 16,974
台湾・香港・マカオ(ACU) 15,767 7,894 6,220 9,718
台湾・香港・マカオ割合(PCU) 52.02% 36.06% 41.69% 41.45%
PCU:ピーク同時ユーザー数
ACU:平均同時ユーザー数

2.7 モバイルゲームとアプリケーションの売上について

モバイル関連の売上は、2億6128万4000ドルである。
この数字は総収入の83.64%を占める。
また、年次報告書の事業のリスクの欄によると、Ragnarok Mの売上は全体の80%との事である。
Ragnarok M以外のスマートフォン向けゲームは8種類ほどリリースしている様だが、売上にはあまり貢献していない。
2018年の実績と比較すると、台湾と韓国の売上が落ち込む一方、タイ王国とアメリカ合衆国の数字の伸びが目立つ。
また国別の売上に占める割合を評価すると、PC版ラグナロクオンラインとは対象的に、東アジアの国と地域の売上は全体の24%程度である。
これは全世界でのサービスの展開に成功している事を意味している。
特定の国と地域にあまりに売上が集中する状況は、カントリーリスクを考慮するとリスクが高い。
特に東アジアは中華人民共和国と中華民国(台湾)、大韓民国と朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)など、安全保障上のリスクを抱える地域が多くある為、これらの地域に収益を依存していない事はリスク分散の意味で好ましいと言えるだろう。

モバイルゲームとアプリケーションの売上 2016年 2017年 2018年 2019年
台湾・香港・マカオ 115万6000ドル 4721万7000ドル 7527万5000ドル 2761万8000ドル
韓国 540万5000ドル 1607万4000ドル 5927万4000ドル 1912万1000ドル
タイ - 400万4000ドル 3788万4000ドル 5297万8000ドル
フィリピン - - 1275万0000ドル 2650万6000ドル
インドネシア - - 795万3000ドル 1888万4000ドル
中国 174万3000ドル 360万5000ドル 257万4000ドル -
アメリカ 100万0000ドル 246万8000ドル 605万3000ドル 4607万9000ドル
日本 57万0000ドル - - 1647万2000ドル
マレーシア - - - 1161万1000ドル
シンガポール - - - 1207万9000ドル
ブラジル - - - 683万6000ドル
その他 12万9000ドル 403万8000ドル 1344万0000ドル 23100万0000ドル
合計 1000万3000ドル 7740万6000ドル 2億1520万3000ドル 2億6128万4000ドル

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モバイル関連売上が全体に占める割合 2016年 2017年 2018年 2019年
割合 23.43% 58.34% 83.51% 83.64%

ラグナロクオンラインモバイルの売上が全体に占める割合 2018年 2019年
割合 75.10% 80.00%

2.8 ライセンス期間

現在のJROのライセンス期間は、2021年9月までである。
余程のことがない限り、この日付まではサービスは継続するだろう。
2018年の年次報告書では、2019年9月までとなっていたが、以前予想した通り、2年の延長となった。
次回も同じ様に更新されるかは分からない。
日本のラグナロクオンラインの売上は減少傾向にあると思われるが、恐らく、26億円程度の売上が上がっている事を踏まえると、この数字が極端に下がらない限り、サービスは継続すると見ていいのかもしれない。

PC版ラグナロクオンラインのライセンス期限 2016年年次報告書 2018年年次報告書 2019年年次報告書 2021年年次報告書
日本(ガンホー・オンライン・エンターテイメント) 2017年9月 2019年9月 2021年9月 2023年9月?

2.9 ガンホーとグラビティの関係

ガンホーのグラビティの関係は、2002年のJROのβテスト時に日本国内独占配信、販売権の契約を結んでから現在まで続いている。
ガンホーがグラビティを買収し、子会社化したのは2008年の事である。
2008年年度グラビティの年次報告書の取締役会の名簿でも、ガンホーの代表取締役社長の森下一喜氏と取締役である坂井一也氏の名前を確認できる。
2019年現在、ガンホーの役員である森下一喜氏(事務局長)、坂井一也氏(事務局長)、北村佳紀氏(取締役会長兼最高執行責任者)は、グラビティの取締役会のメンバーである。括弧の役職は、グラビティでの役職である。
北村佳紀氏はグラビティの北米支社であるグラビティインタラクティブの代表取締役を兼務している。

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会社概要|ガンホー・オンライン・エンターテイメント株式会社

ガンホーの株式の保有率は59.3%であり、前年と変わらない。
取締役会に親会社の経営陣が直接参加する体制も変わらない。
グラビティの取締役会のメンバーは、独立取締役が1名増員した以外に変化はない。
年次報告書のリスクの欄でも触れられているが、子会社と親会社の利益が常に一致するとは限らず、ガンホーとグラビティの利益が相反する可能性は常にある。
この問題はグラビティが利益を出し続ける限りは表面化する事はないだろうが、PC版ラグナロクオンラインの売上が極端に下がるといった事象が起きた場合、グラビティの日本人役員は親会社と子会社の間で利益相反を起こさずに、経営上の判断を下さなければならないという難しい立場に追い込まれる可能性がある。

直近では、Ragnarok Mの影響により、グラビティの売上は増収増益が続いている。
この状況はガンホーから見て、グラビティに対する過去の投資を回収する段階にあると推測できる。
その為、直近でガンホーとグラビティの関係が解消される事は考えられないだろう。

ガンホーが保有するグラビティの株式 2017年 2018年 2019年
割合 59.30% 59.30% 59.30%

2.10 ROのユーザー一人あたりの売上

JROユーザー一人当たりの売上の推定は、以下の通りである。
2.5の日本のラグナロクオンラインの売上の推定を、グラビティが公開しているユーザー数で割って算出した。

JROのユーザー一人当たりの売上 2016年 2017年 2018年 2019年
JROのユーザー一人当たりの売上 17万8149円 26万0944円 28万8356円 29万4261円
JROユーザー数 13,165 11,254 9,805 9,154

ユーザー一人当たりの売上は、29万4261円と高い。
恐らく、一部のユーザーが平均値を押し上げているものと思われるが詳細は分からない。
報道、アンケート調査の結果によると、月にネットゲームに1万円以上の課金をするユーザーは全体の20%という数字がある。
JROについても、全体の上位20%のユーザーの課金額が、売上全体の60%を占めるといった形になっているのかもしれない。

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過去の推移を見ると、2017年以降、ユーザー一人当たりの課金額が増加していると思われる。
JRO全体のユーザー数は減少しているが、売上そのものはあまり減っていない。これはユーザー減に伴う売上の減少を、少数のユーザーが支えているものと考えられる。
この傾向は今後も続くかもしれないが、ユーザーの所得が右肩上がりで伸び、課金額もそれに伴って上昇するとは考え難い。
ユーザーの可処分所得という限界がある以上、少数のユーザーに売上を支えてもらう施策は限界も近いかもしれない。
ユーザー数を増やして、ユーザー一人当たりの負担額を減らす努力が必要と思われるが、これは「言うは易く行うは難し」だろう。
MMORPGのユーザー層として考えられるのは、比較的、可処分時間の多い10~20代と思われるが、この層のPCの普及率は減少傾向にある。

年齢階層別にパソコンの世帯普及率の実情をさぐる(2019年版)(不破雷蔵) - 個人 - Yahoo!ニュース

10代の23.7%は「自宅にパソコンはあるけど使っていない」(不破雷蔵) - 個人 - Yahoo!ニュース

10代の38.3%は「自宅にパソコンはあるけど使っていない」(2019年公開版)(不破雷蔵) - 個人 - Yahoo!ニュース

その為、新規にユーザー数を増やすことは難しいかもしれない。
海外では、クラシック版ROをリリースすることで、新たなユーザー層を掘り起こしているようだが、日本では既にBreidablikで同様の施策を実施済みであるので、同じ対応は取れない。
新規のユーザーを掘り起こす努力をしつつ、既存のユーザーの離脱を防ぐ施策が必要となるだろう。

2.11 新型コロナウイルス感染症の影響

2020年に入ってから、新型コロナウイルス感染症が世界的に流行している。
この感染症のラグナロクオンラインに与える影響をごく簡単にまとめたい。
短期的には、在宅の人間が増えるので、単純に考えれば増益となるだろう。
ただ、この感染症の流行により、経済活動が大きく妨げられており、長期的な影響は分からない。
多くの人の雇用が失われることで、ゲームへの課金などの出費が抑えられる事も考えられる。その為、長期的には減収となるかもしれない。
開発、運営についていは、日本では新規のイベントが延期されるなど、既に影響が出ている。
開発については、テレワークでも可能な筈だが、日本のラグナロクオンラインの状況を見る限り、対応に遅れがあるのかもしれない。
新型コロナウイルス感染症の急速な流行により、態勢が整っていないようだ。
運用についても同様だろう。
日本における新型コロナウイルス感染症の緊急事態宣言も5月末まで延長された。
夏までに正常な態勢に戻るかどうかで、今後を占うべきかもしれない。

2.12 グラビティと日本のラグナロクオンラインの今後

グラビティは、Ragnarok Mをリリースして以降、増収増益が続いている。
2016年と比較すると、2019年の総収入は約7.3倍と驚異的に伸びている。
そろそろ成長も鈍化すると思われるが、Ragnarok Mそのものの事業はこれからも好調という事になりそうだ。
またグラビティは新たに、Ragnarok ORIGIN、Ragnarok X:Next Generationといった新作のMMORPGをリリースする予定らしい。
Ragnarok X:Next Generationの開発会社は、ドリームスクエアらしい。この会社は、Ragnarok Mをかつて開発していた会社である。Ragnarok Mはドリームスクエアから権利を買い取ったXD.comが開発を継続し、リリースした経緯がある。
また、中華人民共和国のテンセントもラグナロクオンラインのMMORPGを開発中とのことである。
似たようなMMORPGを立て続けにリリースするらしいが、既存のタイトルとの競合をどうするのか、どう差別化していくつもりなのかといった点が気になるところだ。

韓国Gravity、『ラグナロク』IPを活用したスマホゲームの展開を強化…『Ragnarok Origin』『Ragnarok Tactics』『Ragnarok X』を準備中!  | Social Game Info

[G-Star 2019]「ラグナロクオンライン」の系譜を継ぐスマホ向け新作MMORPG「Ragnarok ORIGIN」。ROらしさを残しつつ,グラフィックスやゲーム性が進化 - 4Gamer.net

『ラグナロクオンライン』の開発元である韓国グラビティが日本法人を通じて日本市場でMMORPGのパブリッシング事業を開始か | ネトゲ速報

グラビティゲームアライズ株式会社

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またグラビティの日本法人であるグラビティゲームアライズは、ゲームパブリッシング事業を行うらしい。
ラグナロクマスターズの日本でのサービスは、ガンホーが提供しているが、上記の新タイトルはグラビティが直接サービスを展開するつもりなのかもしれない。
ただ、上記のタイトルを日本国内でリリースするとなると、ラグナロクマスターズとの競合は避けられない。
親会社の事業と競合する形で、これらのタイトルをリリースできるのかは分からないが、上手く住み分ける事ができるのなら、日本での展開もあるかもしれない。
いずれにせよ、Ragnarok ORIGINは2020年第3四半期のリリースを目指しているらしいので、2020年の年次報告書ではこれらのタイトルの動きが確認できるだろう。

一方、PC版ラグナロクオンラインの事業も、そのグラビティ、ガンホーにとって重要性こそ低下したが、売上そのものは維持している。
またガンホーの経営陣にとって、JROからのライセンス収入が、グラビティのRO関連の売上高のかなりの割合を占める状態を踏まえると、子会社の事業に悪影響を与える決定は下しにくいと思われる。
上記のような事情を踏まえると、少なくとも2021年9月まではJROは存続するだろう。
それ以降については、現段階では分からない。
ガンホーからグラビティに支払われるライセンス料が800万ドルというそれなりの数字を維持していること、グラビティにとってもRO関連の売上高が全体の10%というそれなりのボリュームを占めるという2つの条件が維持されるのであれば、2021年9月以降もJROのサービスは存続するのではないだろうか。

3. まとめ

ラグナロクオンラインについては、開発会社であるグラビティと親会社であるガンホー・オンライン・エンターテイメントとの間に複雑な関係があり、分析に手間がかかる。
本来、ライセンシーの一つに過ぎないガンホーがライセンサーを買収して子会社にしたという経緯もそうだが、2013年以降、PCオンライン事業の単体の数字を公表しなくなるなど、情報の経路が限られている。
その為、日本のラグナロクオンラインに関する数値は、グラビティの対し、ガンホーから支払われたライセンス料を元に推測を行うなどの作業が必要である。
グラビティのモバイル関連の売上、親会社の役員と取締役会の関係など、従来の分析に加え、ユーザー一人当たりの売上、新規のMMORPGのタイトルについても考察した。
JROの今後について、どうなるかの予想は難しいが、また新たな情報を得られれば、また記事を書いていきたい。

以上で今回の記事を終わりにします。
ちょっと込み入った記事になってしまいましたが、いかがだったでしょうか。
今回紹介した情報は、ラグナロクオンラインのサービスには直接関係しないかもしれません。
ただプレイヤーとして、ゲームに関わる以上、このサービスが今後いつまで続くのかという点について、大いに関心があります。
そういった事を根拠を持って、分析するにはこの様な形でラグナロクオンラインを取り巻く現状を整理することが必要だと考える次第です。
いつまでROとの関わりを続けることになるのかは分かりませんが、ゲームを取り巻く現状を見つつ、ROとの付き合い方を模索することになりそうです。

今回はここまでします。それでは。

2020年5月5日22時30分追記
ブログに表を追加しましたが、HTMLのタグなどの文字列が長く、ブログの記事の長さの制限を超えてしまいました。
その為、モバイルの国別の売上など、一部の表は画像として、アップロードしました。

2020年5月6日23時39分追記
PC版ラグナロクオンラインの国別の売上の2016年の欄の記載が間違っていた為、訂正しました。
合わせて、PC版ラグナロクオンラインの国別の売上に占める割合の表も訂正しています。

こんばんは。
前回に引き続き、RAGNAROK INTO THE ABYSS 2巻の紹介記事を書いていきます。
01
今は、新型コロナウィルス感染症で様々な問題が発生していますが、その影響で私も今週は自宅待機になったので、その時間を利用して書いてみました。
来週は普通に出勤する予定です。
それは兎も角、ROをプレイしたプレイヤーは累計で言うとかなりの数に登る筈ですが、原作を読んだことのある人は10%もいない気がします。
2004年ぐらいに、日本語版も7巻発売されましたが、それ以降は続刊もありませんでした。
韓国語版、英語版も10巻までしか出ていないので、ストーリーは完結していません。

ラグナロク (漫画) - Wikipedia

今回紹介する2巻は、この物語のターニングポイントとなるサラによるフェイヨン襲撃が主な内容です。
このエピソードは実際には、1~2巻にまたがっていて、後半はロキのストーリーが展開しますが、それを愚直に紹介するとテンポが悪くなるので、エピソード単位で紹介することにしました。
その為、タイトルはちょっと正しくはないですが、分かりやすさを優先しました。ご容赦下さい。
サラのフェイヨン襲撃のエピソードは、事実上、この物語のプロローグであって、この事件を起点に各登場人物の物語が動き出します。
そういう次第なので、このエピソードは非常に重要です。その為、気になる点をかなり深堀りしました。
あとは内容を紹介する画像の数はちょっと多すぎたかもしれません。問題になりそうだったら画像は消します。
もう絶版になって久しい漫画なので、機会損失とかは無い筈ですが…
私が個人的に気になった点を深堀りしているので、人によってはピントがずれているように感じられるかもしれませんが、そこはご容赦いただけると幸いです。
調子に乗って書いていたら、結構長くなってしまいました。
最後まで読み通してくれる人がどれだけいるのか分かりませんが、飛ばし読みでもいいので、読んでいただけると幸いです。

1. あらすじ

フェイスワーム退治を終えて、フェイヨンに帰還したケイアスとアイリス。
2人の帰還を暖かく迎えるフェイヨンの人々。
平和に見えるフェイヨンだが、その平穏が破られようとしている事を、まだ人々は知らない。
バルドルの生まれ変わりを探すフェンリルの訪問。
フェンリルを追跡するサラがギガンテスを率い、フェイヨンの間近に迫る。
フギン、ムニンに唆された呪われた剣士サクライもまた、タルタロスの要求を満たす為、「高貴な血」を求めて、フェイヨンへと向かっていた。
様々な思惑が交錯する中、果たして、ケイアスたちの運命はどうなっていくのか。

2. ストーリ詳細

2.1 ケイアス、アイリスの帰還

ケイアス、アイリスがフェイヨンに帰還します。
このシーンは特に解説を付け加える必要はないでしょう。
警備隊長のメッシュが初登場します。
何気ないシーンですが、メッシュの口から「アイリスは我が一族の継承者」、「2人は修行に出た」とさり気なく説明があります。
モンスターの討伐はどうやら2人の武者修行という認識でいいみたいです。
こういう風に武者修行の為にモンスターの討伐などを繰り返しているのでしょう。
余談ですが、アイリスがそんなに重要な地位にいるのなら、お目付け役や護衛も必要だと思いますが、そういう人はいないみたいです。
「可愛い子には旅をさせよ」ということなのでしょうか。
モンスターの討伐に失敗して、アイリスが負傷して、そのまま帰らぬ人に…という話もあり得ると思うのですが、そういう危険への対処も含めて、修行だということなのかもしれません。
そうだとすると、フェイヨンの人たちは案外スパルタですね。
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2.2 アイリスの家族

大長老アイリンが原作で初登場です。
ケイアスの説明によると、「大長老アイリンはこの村の大将」、「フェイヨンは世界中に散らばる四聖水の総本山」、「アイリスの父は村の長老の中の長老。大長老である」との事です。
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外見を見る限り、大長老アイリンは中年の男性であって、老人には見えません。
この後、フェイヨンの長老たちも出てくるのですが、その人達は老人に見えます。
大長老という肩書には、違和感を感じますが、この場合の長老とは名誉称号であって、実際に最年長というわけではないのでしょう。この場合の長老とは、「ある程度の年齢と地位を兼ね備えたフェイヨンの実力者」と解釈するべきなのでしょう。
古代ローマの元老院議員みたいな物なのでしょうか。
江戸時代の日本でも、組織の幹部の肩書に年寄、老中などの年長者を意味する言葉を当てていました。

元老院 - Wikipedia

元老院 (ローマ) - Wikipedia

またキリスト教の内、プロテスタントの一部は、聖職者を長老と呼称する一派があります。
カルヴァン主義に基づく長老派教会がそれです。
大韓民国では、キリスト教が盛んな事は知っていたので、少し調べてみる事にしました。
外務省の公式Webサイトによると、大韓民国の宗教人口は50%程度ですが、その内訳は「仏教:42.9%,プロテスタント:34.5%,カトリック:20.6%,その他:2.0%」との事です。
大韓民国の宗教を扱うWikipediaの記事を見ても、「メソジストと長老派は特に成功」「大韓民国のキリスト教は主にローマ・カトリック、長老派、メソジスト、そしてバプティストという四つの教派によって占められている」という記述があります。

長老派教会 - Wikipedia

長老 (キリスト教) - Wikipedia

長老制 - Wikipedia

カルヴァン主義 - Wikipedia

大韓民国基礎データ|外務省

大韓民国の宗教 - Wikipedia

RAGNAROK INTO THE ABYSSの作者である李命進氏の宗教観は分かりません。
ただ、こういう背景を考えると、長老派教会の運営形態が、フェイヨンの設定に間接的な形で影響していても不思議はない気がします。
李命進氏にとって、聖職者の呼称を長老とするのは、それ程違和感のある設定ではなかったのかもしれません。
この説が正しいとすると、長老は司祭とかそういう役職だと、解釈するべきという話になります。
余談ですが、娘たちは「サラ・アイリン」、「アイリス・アイリン」と名乗っているので、大長老のアイリンとは名字なのでしょう
作中で、彼を名前で呼ぶ人物はいない為、フルネームについては不明です。
どうでも良いのですが、サラは父親と袂を分かったにも関わらず、父親の姓を名乗っているみたいですね。

他には、大長老アイリンの妻が登場します。名前はピオネという名前らしいです。
名前については、2巻で明らかになります。
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本作のヒロインの一人であるアイリスの母親です。17歳の娘がいる割に、結構若く見えます。
ROの原作の世界観は、封建社会だと考えられるので、かなり若い年齢で大長老と結婚したのかもしれません。
サラの母親とは別人です。後述しますが、メモリアルダンジョン「サラの記憶」の時間軸は、12年前の事らしいです。
サラの母親と大長老は、12年前まで婚姻関係にあったので、結婚したのはその後なのでしょう。
後妻を迎えたという事なのだと思いますが、アイリスの年齢が17歳なのに、2人が結婚したのはそれ以降というのは…
以前、原作の登場人物紹介の記事を書いた時にも指摘しましたが、これはどういう事なのでしょうね。
大長老アイリン、サラの母、アイリスの母の交際期間が被っているとしか考えられません。
アイリスの出生の問題については、この物語の根幹に関わる話の一つなので、あとで触れようと思います。
あとはケイアスに懐いているフェイヨンの子供たちが登場します。ただ、この子供たちは特にストーリーの本筋に絡んでは来ないので、割愛します。

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2.3 四聖水の継承者問題

大長老の自宅を訪問したフェイヨンの長老たちと大長老アイリンが、四聖水の継承者について、話し合いをします。
この間の別のシーンで、この長老たちは元老であると明言されます。
この元老たちは、年長者という意味でのフェイヨンの長老なのでしょう。恐らくは引退した身なのでしょうが、権威については失われていないようです。
大長老も敬語で接しているところをみると、大長老の地位はフェイヨンの名目上のトップではあっても、フェイヨンの支配者とまでは言えない地位なのだと思います。
現実の組織でも、名目上の代表は、実態としては組織のある部門のトップに過ぎず、他の部門との合議制で事を進めなければならず、トップが他の部門に直接干渉することは出来ないとか、よくある話ではあります。
大長老と元老たちの関係はいまいち分かりませんが、会社の社長と会長みたいな関係なのでしょう。

現役のフェイヨンのトップにアポ無しで会うことが出来て、かつ、ぞんざいな口を聞いても大長老が受け入れているという様子を見るに、この元老たちは先代の大長老とかそういう地位に付いていて、アイリンを後継者に指名したとか、現役時代はアイリンと上司と部下の関係だったとか、そういう事なのかもしれません。
ただ単に最年長の長老というだけでは、こうはならないでしょう。

話し合いは大長老の自宅の庭で行われている為、偶然居合わせたアイリスも立ち聞きしています。
主な内容は、アイリスが四聖水の継承者として満足な成果を上げていない事、四聖水の力は「12年前にあの事があってから、出ていった子」に引き継がれているのではないかという2点です。
「12年前のあの事」とは、メモリアルダンジョン「サラの記憶」の事件であり、「出ていった子」とはサラのことです。
一応、大長老と元老たちとの会話は今後に関わってくるのですべて引用します。
2-3-1
2-3-2
2-3-3
2-3-4
2-3-5
2-3-6
2-3-7
2-3-8


一連のやり取りを見るに、フェイヨンの元老たちは非常に意固地で、独善的な人物に見えます。
大長老によるアイリスの修行が満足の行く成果になっていない事に文句を言いに来たのですが、ではどうするべきかといった解決策を考える姿勢はまったくありません。
「四聖水の継承者はフェイヨンの正当な血筋でなければならない」という考えに凝り固まっているみたいですが、そうではないという実態があるのに、解決策を模索することもしていないみたいです。
元老たちのこの態度には、大長老も些かうんざりしてそうな雰囲気があります。

また彼らの言動を見る限り、「12年前のあの事」に関する反省が皆無です。
この元老たちは「サラの記憶」の事件を手引した長老ではないのでしょうが、あの件は少なくとも彼らの同僚がしでかした不始末だった筈です。
それにも関わらず、事件の表現が「12年前のあの事」と、まるで自然発生した出来事の様に言っている様子からは当事者意識が欠けているのでは、と思わざるを得ません。
あとはサラのことを「出ていった子」と言っていますが、実態はサラは殺されかかって、這々の体で故郷から逃げ出さざるを得なかったのであり、自発的に出ていったのではありません。

大体、「サラの記憶」の事件では、大長老アイリンは被害者です。
あの事件では、サラの母親である妻が死んでいるので、その話をするのであれば、もう少し配慮があってもいいでしょう。
元老たちの口調からは、そういう配慮が全く感じられません。
「サラの記憶」の事件は12年前の出来事の筈なので、何がまずかったのかを反省したり、我が身を振り返る時間は十分あった筈です。

この話が出た直後、大長老アイリンは長老を睨んでいますが、相当苛立ったのだと思います。
流石に腹に据えかねる物があったのか、大長老アイリンも継承者の現状の原因が「12年前の出来事」にある事を示唆しますが、それを聞いた元老たちは反省するどころか、怒りだす始末です。

私が思うに、元老たちがやるべきことは、アイリスに四聖水から応答がないという事実に対して、原因と考えられる「12年前のあの事」と「出ていった子」との絡みで、どう対処すべきかを大長老アイリンと話し合うことです。
現状については、元老たちにも責任があるでしょうから、大長老一人に責任があるかの様な物言いも慎むべきでしょう。
元老たちの対応を見る限り、思うように行かない現状に対し、自分たちのことを棚に上げて、担当者に文句言っているように見えてしまいます。
四聖水の一族にとって、自分たちの身内に継承者がいないという事がどれだけ深刻な問題かは分かりませんが、多分、組織の根幹に関わる問題なのでしょう。
四聖水(青龍、朱雀、白虎、玄武)は、唯一無二の存在で、四聖水その2(青龍2、朱雀2、白虎2、玄武2)みたいに複数存在するわけではないだと思います。
話の流れから推察すると、四聖水の継承者は当代に1人しかいないのだと思います。複数の人間が同時に継承者になる事は出来ないのでしょう。
こうなると、継承者の教育担当個人を吊し上げて済む問題ではなさそうなので、一致団結して難局に対処するべきと思われます。
元老たちも事態の原因は、大長老アイリンのアイリスの教育の問題だけではなくて、「12年前のあの事」にあると示唆しているのですから、尚更です。
しかし、元老たちの態度はどうもそうではありません。
元老たちは理屈の上では、自分たちに事態の責任の一端があることを自覚しているにも関わらず、自分からはそれを認めないばかりか、上記の通り、大長老アイリンがそれを示唆しただけで怒りだす始末です。

問題に対処する為、組織の態勢を組む、問題解決に向けた目標を設定するといった組織のマネジメント層が取り組むべき行動を取ろうとしている様に見えません。
大体、そんなに四聖水の継承者が大事で、かつ、自分たちの身内から調達することも出来ないのであれば、何とかしてサラを探し出して、土下座をしてでもフェイヨンに戻ってきてもらう必要がありそうです。
上で推測したように、四聖水が唯一無二の存在で、同じ時代に複数の継承者が存在できないのであれば、そうするしかないでしょう。
ただ、目下の人間から自分たちに責任の一端があることを示唆されただけで、激怒して会話を打ち切るような狭量な様子では、この人たちはそういった対応を期待するのは無理そうです。
この元老たちは特別ひどい人たちだと思いたいです。ただ、この人達はフェイヨンの実質的なトップであろう大長老にアポ無しで会うことが可能で、非常に高圧的な口調で口を利いても許されるような人たちです。
元老たちの中でも特に高位の立場にある人たちなのでしょう。こういう人たちがトップに座って、あれこれと指図しているようでは、フェイヨンの未来は暗いなぁ、と感じます。

一連のやり取りを見るに、元老たちの独善的な態度や価値観は、多分、事件の前からそうで、今も変わらないと見るべきでしょう。
こういう硬直した思考と偏狭な価値観が、「サラの記憶」の事件の背景にある事は容易に想像できます。
また少しでも事件の当事者としての自覚があれば、ああいう口ぶりにはならないでしょう。
内心はどうであれ、多少の反省の弁を口にしていれば、大長老アイリンの態度も違ったのではないでしょうか。
それにしても、四聖水の継承者は特定の血筋でないといけないらしいのですが、大長老アイリンの直系でないとダメなのでしょうか。多分、本家の他に分家などがあるのかもしれませんが、そこら辺の事は描写がないので不明です。
長老の口から「我が一族」という言葉が出てきているので、ファイヨンの血筋であれば、問題ないとも取れますが…ここら辺の問題を推論するには材料が足らないのでこれ以上の考察は無意味でしょう。

話を大長老に戻しますが、大長老アイリンは内心ではフェイヨンの指導者層を見限っていても不思議ではないと思います。
大体、「サラの記憶」の事件で、妻を殺され、子供は行方不明という結果を考えれば、事件の背景となった元老たちの偏狭な態度には辟易としていることでしょう。
継承者の問題について、どこか他人事みたいな調子の物言いや、サラこそが正当な継承者である事を示唆する言動などにそれが伺えます。

余談ですが、「サラの記憶」に登場した暗殺者を手引した長老たちがどうなったのかは気になるところです。
彼らについては、特に描写はありません。ただ、事件の後にも関わらず、大長老アイリンはその地位に留まっています。
その事を踏まえると、事件の結果、彼らの派閥は大長老アイリンとの権力闘争に負けて放逐されたか、大きな後退を余儀なくされたと解釈するべきなのでしょう。
そもそも暗殺という手段で大長老の家族を排除しようとした背景には、彼らの行動はフェイヨンの指導者たちの全面的な支持までは獲得出来ていなかったという事情がありそうです。
フェイヨンの指導者の総意として「サラを継承者として認めない」という意思が固まっていたのであれば、正当な手段で大長老たちをその地位から引きずり降ろせば済む話です。
恐らく、サラのことを快く思わない長老は多かったと思われますが、サラを排除しようという所までは行っていなかったのではないでしょうか。またサラを排除するにしても、その手段については、意見が別れていたのかもしれません。
「サラの記憶」の事件は、その時に長老たちの間で蔓延していた空気を反映してはいたけれど、その様な直接的な行動に出る人間は流石に少数だった、というのが真相な気がします。
少数の長老の暴走であって、事の真相が明らかになると、彼らは何らかの処罰を受けたと見るのが妥当でしょう。
「サラの記憶」の事件で、長老たちに大長老アイリンを暗殺するという目的があったのかは描写されていませんが、妻と子供に危害を加えられた大長老が長老たちの言いなりになるとは考えにくいので、まとめて排除するという計画だったと捉えるのが、無理のない解釈だと思います。
組織のトップとその家族に危害を加えた挙げ句、トップは負傷したものの生き残る、妻は死亡、子供は行方不明という結果を見るに、事件の主犯格の長老は死刑になっていてもおかしくないでしょう。
ただ、事件の後もそういう人間を生んだ派閥、偏見、精神的風土といった物は生き残り、現在でもフェイヨンの指導者層に共有されているという事なのでしょう。

2.4 宝刀の行方

リディアは、皆が寝静まった夜に、海龍刀、神龍刀を狙って動き出します。
フェイヨンには、四聖水の継承者に伝えられる宝刀として、天龍刀、海龍刀、神龍刀が存在します。
四聖水の継承者にしか所持できないというのは、アイリスの発言からです。
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ピオネの発言によると、「海龍刀、神龍刀は四聖水と一緒に消えた」との事です。
「サラの記憶」やこの後の展開を見ると、この事件の裏でフギン、ムニンが暗躍していたことが分かります。
直接事件に関わったわけではないでしょうが、フェイヨンの内紛に乗じて、サラをフレイヤのヴァルキリーに引き入れたのは彼らです。
何故、フレイヤがサラを必要としたのかはよく分かりません。
事件当時のサラはまだ子供で、フレイヤの即戦力になれるような人材には見えません。
サラを魔術師として養育したのは、フレイヤたちだったのでしょう。そういった手間暇を掛けてまで、サラを味方として引き入れたかった理由は明言されていません。
サラ以外のヴァルキリーの中には、強力な魔術師が何人もいるみたいなので、それだけが理由なのではないでしょう。
四聖水の継承者であり、フェイヨンに伝わる宝刀の所持者である、という特別な存在であるサラを、何らかの理由でフレイヤが必要としたと考えるのが妥当な気がします。
フレイヤが四聖水をどうしたいのかは、ちょっと分かりかねます。力を借りたいのか、それともサラを通じて呼び出した四聖水を始末したいのか、それ以外の思惑があるのか不明です。
いずれにせよ「サラの記憶」の時点で、サラは宝刀を持って逃げたわけでないので、順当に考えるとフギン、ムニンたちが海龍刀、神龍刀を盗んだと考えるのが妥当でしょう。
余談ですが、海龍刀は、現在、サラの所有物です。神龍刀については2巻の時点では未登場です。
またフェイヨンの宝刀は、四聖水の継承者にしか所持できないとの事ですが、サラが正当な継承者であるのなら、アイリスが天龍刀を所持できるのはおかしいかもしれません。
そうなると「四聖水の継承者にしか所持できない」という言い伝えは実は間違っていて、誰もそんな事を試したことがなかったので認知されていなかったが、ある程度の修行を積んだ人間であれば、所持できて、四聖水の正当な継承者であるかは必須の条件ではなかったという事なのかもしれません。
それにしても、宝刀を盗みに来たトレジャーハンターに一族の秘密を喋ってしまうとは、ピオネさんも口が軽いですね。作者もコメントで突っ込んでいます。
まぁ、フィクションの世界で秘密を握る人間の口が異様に軽いのは、よくある話です。
物語のキーとなる設定をテンポ良く伝えないといけないので、ピオネさんの口の軽さは本人の迂闊さではなく、作劇の都合と受け取るべきなのだと思います。
ROでも、七王家のクエストで王家の関係者の口が異様に軽かったのと同じでしょう。


2.5 ケイアスとフェンリル

その翌日、フェンリルは遂にケイアスと接触します。
ケイアスをバルドルの生まれ変わりだと見なしているフェンリルにとっては、感動の再開です。
しかし、この時点でのケイアスはバルドルの生まれ変わりだという自覚がない為、つれない態度です。
フェンリルはショックを受けていますけど、前世の記憶がケイアスにないのなら、こうなるのもしょうがないでしょう。
というか、いくら美人でもいきなり前世がどうのこうのという話を捲し立てられたら、警戒心が先に立つでしょうし、そういう人と一緒に行動するという話にはなり難いと思います。
さり気なく、フェンリルの口から「本来の力を取り戻す為、神の肉体を探す必要がある」という設定が語られていますね。
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2.6 サラ襲来

いきなり、フェイヨンの結界が破られ、警備隊に緊張が走ります。
結界を破ったのは、ギガンテス率いるサラです。
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魔力の大きさを表す、ルンという単位が出てきます。
ギガンテスは3万ルン以上の魔力を持っているらしいですが、この数字はこのシーンが初出で、比較対象がないのでいまいち凄さが分かりません。
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またメッシュの口から「あれは伝説の聖戦で、神々と争った巨人族ギガンテス。絶滅した筈だが…」という説明が入ります。
ギガンテスはギリシャ神話の巨人で、神々と争ったという伝説があるので、これをそのまま引っ張ってきたのでしょう。

ギガース - Wikipedia

ギガントマキアー - Wikipedia



2.7 サラの出生

大長老アイリンがアイリスを町外れの橋に呼び出し、サラの出生について伝えます。
大長老の話によれば、サラはアイリスの4つ上の姉とのことです。
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となると、サラの年齢は21歳という事になります。
「サラの記憶」の事件は、12年前の出来事らしいので、事件当時の年齢は9歳です。
事件当時、アイリスは既に生まれていて、5歳でした。
以前書いた登場人物紹介でも触れましたが、サラの母親は死別するまで、大長老アイリンの妻だった筈です。
アイリスの母は素直に考えると、後妻だったと解釈するべきでしょう。
しかし、「サラの記憶」の時点で、アイリスが5歳となると話は変わってきます。
アイリスが大長老の実子だとすると、大長老アイリン、サラの母、アイリスの母の交際期間は被っていたとしか考えられないわけです。
この点については、色々と突っ込みたいので、詳しくは後の記事で触れようと思います。
あとは大長老の家を訪れた長老たちは、元老であると明確に書いてあります。
あとはさらっと「姉の記憶は元老が呪術で消した」とありますが、自分たちに都合の悪い話は隠蔽してしまえば問題ない、という元老たちの姿勢が伺えて、何だか嫌な印象を受けますね。


2.8 フェイヨン警備隊の抵抗

サラとギガンテスの襲来に対し、フェイヨン警備隊は切り札を切ります。
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正直、魔刀粒子砲発射のシーンは、原作を読んでいて、一番驚いたかもしれない一コマです。
フェイヨンにこんな大砲があったなんて、ROで描写されてましたっけ?
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やってません。
真打ちが登場するまで、敵が不死身のタフネスを誇るのは、バトル漫画のお約束ですね。
ギガンテスは、この後に登場する真打ちに倒される予定なので、大砲の一撃で半死半生になったりしていたら、あとに続く真打ちの強さが描写できないので、こうなるのも仕方がないでしょう。
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フェイヨン警備隊及び魔刀粒子砲の一斉発射にもびくともしなかったギガンテスですが、真打ちとして登場した大長老アイリンに一撃で倒されます。
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2.9 サラの出生

他に該当者がいないので、読者には既に明らかなことですが、サラが大長老アイリンの娘であり、「12年前にいなくなった子」である事が明示されます。
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あとはアイリスがサラの存在を認識します。
この時点では、「12年前のあの日」の出来事の詳細は明らかにされません。
話は変わりますけど、サラがフェイヨンに来た理由は、フェンリルの追跡だった筈です。
結界を破らないと侵入できなかったのかもしれませんが、その後はフェイヨンの街にギガンテスをけしかけるなど、フェンリルを探す努力をするべきではないでしょうか。
どうやら、本来の目的はどうでも良くなっているみたいです。
上司の命令よりも私情を優先したくなる気持ちは分かるのですけど、ちょっといかがなものかと思わないでもありません。


2.10 ケイアス、フェンリル、アイリスの対応

サラの攻撃でアイリスは意識を失います。
メッシュがアイリスの護衛をしていた筈ですが、姿が見えません。
何らかの理由ではぐれたのでしょう。アイリスは駆けつけたケイアスによって助けられます。
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2人の話にフェンリルが割り込みます。今の段階では、サラに勝てないらしく、逃亡を提案します。
そうこうしている内に何者かが3人に近づいてきました。

2.11 サクライの襲撃

フギンたちに誘導されたサクライが、フェイヨンに入ります。サラの襲撃のどさくさに紛れて、侵入したのでしょう。
ピオネは子供たちを逃し、サクライと対決します。
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2.12 ケイアス、アイリス、フェンリルVSサラ

サラの襲撃を迎撃する為、3人はサラの元へと向かいます。
迎撃しようとしたのは良いのですが、あっさりとサラに動きを封じられます。
サラに一撃を加える前にこの状態なので、フェンリルの見立通り、今の段階ではサラに敵わないみたいです。

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2.13 「サラの記憶」

ここでサラの回想が入ります。
この描写は「サラの記憶」のエピソードですね。サラが傷ついた母と剣を持った父を遭遇するシーン、フギン達が迎えに来るシーンはゲームにそのまま流用されています。
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2.14 大長老VSサラ

サラの猛攻を大長老アイリンが防ぎます。
大長老は娘に対して、戦意がないみたいなので、防御のみです。
サラの攻撃を凌げる人は、この時点では大長老のみで、彼の実力は相当高い事が伺えます。
フェンリルなら可能性はありそうですが、サラの襲撃を知った際、逃走を提案していますし、先のシーンでケイアスと一緒に動きを封じられているので、現時点ではサラの方が強いのでしょう。
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2.15 フギンたちの思惑

サラたちの戦闘を監視するフギンたちが、非常に思わせぶりなセリフを言います。
この「覚醒」が何を意味するのかは不明ですが、多分、四聖水に関連する何かなのでしょう。
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2.16 タルタロスの要求

子供たちを殺そうとするサクライですが、タルタロスに静止され、狙いをサラに移します。
ピオネと対決していた筈のサクライが、子供たちを追跡している点とサクライのセリフから察するに、どうやらピオネはサクライに倒されたみたいです。
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サクライは、サラと大長老の戦いの様子を見ながら、サラを襲撃する機会を伺います。
サラはサクライよりも強いらしいですが、不意打ちなら倒せると踏んだみたいです。
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どうやら、サクライがサラを襲撃することはフギンたちには織り込み済みの様です。
サクライをサラにけしかけることがフギンたちにとって、どういう意味があるのかは判然としません。
フギン達は、サクライとタルタロスの関係を熟知していたので、こうなる事は予想できた筈です。
フギン達はサラを「覚醒」させたいらしいですが、サクライがサラを襲う事も計画の内なのでしょうか。
フェイヨンの子供たちが、アイリスたちと合流し、ピオネや元老達が死亡したことを伝えます。
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2.17 サラの攻撃により、アイリスが負傷

サラの一撃で、アイリス達は負傷します。
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娘の危機に危険を顧みずに大長老アイリンは救出に向かいます。
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この時点でサラがアイリスを認知し、サラが家族に対する思いを吐露します。
このセリフに関しては、これ以上ない、シンプルかつ直接的な表現になっているので、くどくどとした説明は必要ないでしょう。
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前後の台詞からすると、サラはアイリスとは初対面だったみたいです。子供の頃に顔を合わせているのなら、こういう台詞にはならないでしょう。

2.18 海龍刀の所持者

サラが海龍刀を抜き、大長老アイリンとの戦いに決着を付けます。
その背後を更にサクライが狙います。
大長老アイリンは胴体を剣で貫かれているので、致命傷を負ったと解釈するべきでしょう。
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2.19 ケイアスの覚醒

負傷した仲間たちを見て、ケイアスが覚醒します。
どうやら、ケイアスが覚醒する事もフギン達の計画の内だったみたいです。
サラを狙っていたサクライの剣は大長老を貫きます。どうやら、直前に身を捩ったのは、サラを庇うためだった様です。
召喚されたエンシェントドラゴンの強力なブレスにより、サラ達の姿が閃光に消える所で、サラによるフェイヨン襲撃のシーンは終わります。
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2.20 その後

ここで一旦、フェイヨンの話は終わり、次はアサシンギルドのロキに視点が移ります。
フェイヨンの話は、その後でまた再開されます。
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3. アイリン家の家庭問題

この章では、アイリン家について触れたいと思います。
何故かというと、この物語の主要人物の一人は、サラ・アイリンであり、彼女の行動がストーリーを動かす役割を担っています。
サラは四聖水の継承者であり、本作のヒロインであるアイリスの姉であると同時に、この作品の黒幕であるフレイヤの親衛隊の一員だったりと重要な役割をいくつも担っています。
その為、登場の頻度も高く、かつ、物語の重要な部分にも深く関わっています。正直、この漫画の主人公は、実はサラなのではないかと思ってしまうレベルです。
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サラが登場するシーンはよく描き込まれていて、作者も力を入れて描いている事が伝わってくるので、余計にそう感じてしまうのですよね。
そのサラによるフェイヨン襲撃は、この漫画のストーリーの転機であり、ここから本格的に物語がはじまると言っても過言ではありません。
サラがフェイヨンを襲撃した理由は、アイリン家の人々を巡る家庭内の人間関係のもつれなどが大きく関わっています。
この物語の主要人物であるサラとアイリスを巡る物語も、物語の主要な要素である事は間違いありません。
そういう次第なので、この章では、主にアイリン家の家庭問題を中心に、個人的に気になった点を取り上げていこうと思います。

3.1 ケイアスとアイリス

いきなり下世話な話ですが、ケイアスとアイリスは付き合っているだろう、と思わせる描写が多々あります。
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アイリン家の家庭問題を取り上げると言っておきながら、話が違うではないかと思われるでしょう。
私が問題にしたいのは、異邦人という意味では、ケイアスもサラの母親と同じだろうに、何故、周りの人間はその事を問題にしないのかという点です。
「サラの記憶」のストーリーを思い出していただきたいのですが、そもそもフェイヨンの長老たちは、サラが異邦人の血を引いていることを理由に殺すことも辞さないという人たちです。
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すべての長老がそうでないにしても、そういう人が出てくる背景には、余所者を受け入れない閉鎖的な風土があると考えるべきなのでしょう。
ケイアスとアイリスも周りからの口煩く言われて、さぞや、うんざりしていると思っていたのですが…どうもそういう雰囲気ではありません。
というか、2人は人前でも普通にじゃれ合っていて、交際を隠している気配がありません。
ケイアスとアイリスが一緒にあちこち動き回っているのは、フェイヨンの警備隊長であるメッシュでさえ知っています。
メッシュは何というか、見た目通り、無骨な人物なので、そういうゴシップに疎そうな人物です。
このシーンは2巻以降の回想シーンなのですが、こんな風に面と向かって、ケイアスとアイリスの交際に文句をつけている人物はメッシュだけです。
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そもそも、この2人はフェイスワームの討伐に赴く際、二人っきりで行動していて、外泊までしています。
お目付け役でも付ければいいのに、それも無しです。大長老アイリン、ピオネはこの事を知っていながら、その事については何も言いません。
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一体、どういう事なのでしょう? アイリスはこれまで散々触れましたけど、普通の村娘ではなく、四聖水の継承者です。
四聖水の一族にとって、四聖水の力を制御できる継承者の存在は、必要不可欠な存在である筈です。
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大長老アイリンの娘であるアイリスが四聖水の継承者に選ばれたように、どうもフェイヨンの支配層はその地位を親から子に受け継がせている様子です。
そうなるとアイリスが子供は出来たなら、四聖水の継承者になる可能性は高いのだと思います。
四聖水の継承者の地位が、四聖水の一族の中でどういう立ち位置なのかはいまいち分かりませんが、それなりに高い地位にあるのでしょう。
また大長老アイリンは「フェイヨンは世界中あちこちに散らばる四聖水の守護者一族の総本山であり、その長老たちの中の長老」との事ですが、こうなるとその地位は宗教家に留まるものではないでしょう。
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フェイヨンは独自の警備隊を持って、外敵からの侵入に備えているのですが、この警備隊、かなりの重武装です。
ギガンテスには通用しませんでしたけど、魔刀粒子砲なんていう兵器まで持っています。
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こういう独自の武力で自分たちのテリトリーを守っている点、世界各地に散らばる教団の総本山という立ち位置からすると、フェイヨンの四聖水の一族はある程度の領土を実効支配する独自の政治勢力であると見るべきかもしれません。
こういう例は現実にもあって、ローマ・カトリックはかつては教皇領という独自の領土を持つ、実質的な国家として動いていました。日本でも、戦国時代の数千人の僧兵軍を持つ比叡山延暦寺、一向一揆を組織し、信長包囲網に参加して、石山合戦で織田信長と対決した浄土真宗本願寺など、封建時代の宗教団体は、独自の領土、武力、財源を持つ、強力な政治勢力でした。
漫画の背景を見る限り、フェイヨンの村の建物は、村といっても、山岳地帯に石造りの建物で作られています。
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こういう石造りの建物を山岳地帯に建てるのは、相当なコストがかかるでしょう。
あとは大長老とアイリスが話をしている橋も非常に立派で、フェイヨンの財政の豊かさを伺わせます。
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こういう背景を含めて考えると、大長老アイリンは非常に気さくな感じで、そういう雰囲気を伺わせませんけど、実際にはローマ・カトリックの歴代教皇や石山本願寺のトップで、信長包囲網に参加した顕如みたいな地位にあると見るべきなのではないでしょうか。
そうなると、アイリスは実質的に封建領主の姫君とか、そういうレベルの存在とみなすべきだと思います。

こうなるとアイリスの夫が誰であるのかというのは、アイリス個人の問題とは言えないわけです。
大長老の地位をアイリスが次ぐのか、ローマ・カトリックの様に聖職者の中から相応しい人物を合議制で選ぶのかは分かりませんが、アイリスの夫は四聖水の継承者の夫として、その子供の養育にも関わるし、現役の組織のトップの義理の息子として、フェイヨンで権勢を振るう可能性すら考えられます。
そうなると、今現在、アイリスと付き合っているケイアスという青年が何者であるのか、という事はフェイヨンの指導者層にとって、大きな関心事である筈です。
しかし、上記の通り、アイリスとケイアスの交際に文句を付けているのは、上記の通り、メッシュだけです。
メッシュのセリフから察するに、他の人間が何も言わないから、自分が言ってやったという雰囲気です。
どうも他の人間は何も言っていないみたいです。元老たちにしても、その事については話題にもしません。
サラの母と娘については、周囲の人間は結構グチグチと話題にしているにも関わらずです。

大長老夫妻に関しては、アイリスとピオネの危機を過去にケイアスが救ったらしいので、その関係で2人の交際を許容している、と見ることは不自然ではありません。
ただ、それを差し引いても、素性がはっきりしない男性が四聖水の継承者に近づいても、特に対応しないという態度にはちょっと疑問を感じます。
大体、ケイアスの素性がはっきりしない原因は、本人が記憶喪失に陥っていて、昔のことを覚えていないからなのですが、これはあくまでもケイアスの自己申告です。
ケイオスを侮辱するわけではないのですが、逃亡中の犯罪者か何かが、過去を詮索されないように適当に話をでっち上げている可能性すら考えられます。少なくとも、ケイアスの自己申告の裏を取っているとは思えません。
ケイアスとアイリスの交際を見守る大長老夫妻の振る舞いは、一個人としては非常に好感が持てますけど、統治者としては脇が甘すぎる気がします。
異邦人の妻を迎えた結果、サラという娘が継承者になるかどうかで、殺し合いまで起こったという過去の経緯を考えると尚更です。
元老たちについては、老人なので若者の人間関係に疎く、2人の交際を知らないのだと考える事も出来ますし、あるいは「サラの記憶」の事件を反省して、余所者に対する態度を和らげていると考えることも出来なくはありません。
ただ、元老達はアイリスの修行が満足の行く結果を出せていない点について、グチグチと文句をつけていたので、アイリスが男性と遊び歩いているなんて話になったら、真っ先に文句を付けそうです。
余所者に対する態度についても、「サラの記憶」の事件に対する口ぶりを見る限り、果たしてそうなのか疑問に感じます。

全体的に見て、フェイヨンの関係者はケイアスとアイリスの交際については、許容しているとか考えられないわけです。
大長老アイリン、サラの母親、サラを巡って、あれだけグチャグチャと揉めていた事を考えると、その落差が目立ちます。
この落差には何の理由があるのかを考えてみましたが、とどの詰まり、肌の色が問題だったのかもしれません。
非常に嫌な想像なのですが、大長老とサラの母親の交際がダメで、ケイアスとアイリスの交際が許容されている理由は人種的な偏見が根底にあるとでも考えないと説明が付かない気がします。
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要するにフェイヨンの人達にとって、自分たちと肌の色が違う人種がフェイヨンの重要な地位に付くことは許容できないが、自分たちと見た目がそれ程変わらないのであれば、四聖水の継承者と異邦人が交際しても気にならないという事だったのではないでしょうか。
この部分、書いていて非常に嫌な感じなのですが、一方の関係は継承者の地位を巡って、殺し合いにまで発展しているのに、もう片方は周囲の人間から何も言われないという落差を説明するには、こういう理由でも持ってこないと説明が出来ないのではないかと考える次第です。

3.2 アイリスの出生問題

以前も何度か触れていますが、改めて、サラ、アイリスの出生について、整理してみようと思います。
これに関わる人間は、アイリス自身、サラ、サラの母親、アイリスの母であるピオネ、大長老アイリンです。
アイリスの年齢は17歳なのですが、サラの年齢は4歳上らしいです。その為、サラの年齢は21歳という事になります。
大長老アイリンがサラの母親といつ結婚したのかは分かりませんが、少なくとも、子供が生まれる以前だと思われるので、21年以上前だと思います。
サラの母親は12年前に「サラの記憶」の事件で死別しています。
この事件はサラが9歳の時です。異母妹であるアイリスは既に生まれていて、5歳です。
「サラの記憶」の事件の描写でも分かる通り、大長老アイリンとサラの母親は事件当時、婚姻関係にあり、アイリスの母は後妻である筈です。
それにも関わらず、アイリスがこの時点で生まれているということは、大長老アイリンと、サラの母、アイリスの母の交際期間は被っているとしか考えられません。
大長老アイリンはアイリスの母と不倫していたのでは、と疑ってしまいますが、今回はこの件について、合理的に説明できないか検討してみます。

3.2.1 フェイヨンは一夫多妻制だから問題ない

真っ先に考慮したのは、この点です。
サラの母、アイリスの母のどちらが正室なのかは分かりませんが
聖職者が複数の女性と妻帯するのは、現代人の感覚からするといかがなものかと思いますが、日本でも本願寺の中興の祖である蓮如には5人の妻がいたので、実例がないわけではないみたいです。
RAGNAROK INTO THE ABYSSの社会は封建時代で、どうやら、フェイヨンでは親から子に権力が受け継がれているみたいです。
リスクヘッジの意味でも、そういう制度があってもおかしくはないでしょう。
そういう描写がないか、さらっと単行本を見てみたのですが…どうも、フェイヨンに限るとそういう描写は見つかりませんでした。
描写がないということは、そういう事はないという風に受け取るべきなのでしょう。

3.2.2 アイリスの年齢は実は間違っている

これについては…殆ど可能性はなさそうです。
アイリスが17歳というのは、元老のセリフが初出だと思いますが、アイリスも数字の訂正をしないので、それが正しいのでしょう。
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17歳の若さで自分の年齢を間違えるというのは、ちょっとありそうもない話です。
アイリスの年齢については、17歳で確定していいでしょう。

3.2.4 サラの年齢は実は間違っている

同じ理由で、サラの年齢が間違っているというのも考え難い事です。
サラがアイリスの4つ上というのは、大長老アイリンの証言ですが、普通、娘の年齢を間違えたりはしないでしょう。
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もちろん、咄嗟に正確な数字が出てこないというのは、あり得る話ではあります。
ただ、その場合でも4~5歳もずれた数字が出てくるというのは、流石にないと思います。
大長老アイリンは見た目は中年男性ですし、まだ耄碌するような年ではないでしょう。
原作でも「サラの記憶」の回想が入りますが、サラが9歳だと考えると、ちょっと幼すぎる気がします。
日本の9歳の女児の場合、平均身長は133cm、体重は30kgらしいので、肩車をするのはちょっと大変そうですね。
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大長老アイリンはやたらと体格が良いので、そこら辺は平気なのかもしれません。

3.2.5 「サラの記憶」の事件は12年前ではない

この可能性についても、ほぼ考えられません。
この事件が起こったのは、12年前であるという証言は元老、大長老アイリン、サラ、メッシュが行っています。
数字そのものは、利害が対立する関係者の間で数字が一致しています。
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本当にしつこいぐらいに「12年前」という数字を連呼しているので、証言している人間全員が数字を間違っているというのは、さすがに無理があるでしょう。

3.2.6 アイリスは実は連れ子

アイリスは実はピオネの連れ子で、大長老アイリンの間に血縁関係はないという見方も出来なくはありません。
しかし、そうだとしたら、元老達の態度が不可解です。
「サラの記憶」では、実力行使をしてでも、サラを四聖水の継承者にしないという意思表示をした人間までいる事を踏まえると、アイリスの出生は長老たちにとって、最大の関心事である筈です。
四聖水の制御には、継承者の血が必須らしいですが、順当に考えるとこれは大長老アイリンの実子でないとダメだという事なのだと思います。
元老が大長老アイリンに詰め寄るシーンでは、元老達はアイリスの血筋については、まったく問題にしません。
もしも、アイリスが連れ子なら「アイリスはそもそもお前の血を引いてないではないか」といったセリフが元老から出てもおかしくありません。
というか、アイリスが継承者の血筋ではないという疑念が少しでもあれば、元老達はアイリスを四聖水の継承者にしなかったのではないかと思います。
何らかの理由で、元老たちには「アイリスは継承者の血を引いている」という確信があるのでしょう。
その理由とは、順当に考えると「アイリスは大長老アイリンの実子である」という事なのでしょう。
勿論、継承者の血筋が大長老アイリンに限るとは、明言されていません。
大長老アイリンの家の他に、分家か何かがあって、ピオネはそこの出身なので連れ子でも問題ない、という可能性もあり得ます。
ただ、そうだとすると劇中でそういう描写がないのは不自然です。
描写がないという事は、そういう事実はないという事でしょう。
あとはメタな指摘をすると、アイリスが大長老アイリンの実子でないとなると、アイリスとサラの間のストーリーを展開させ難くなります。
ストーリーの展開の都合を考えると、アイリスが大長老アイリンの実子でない可能性というのは、殆どないのではないでしょうか。

3.2.7 アイリス出生問題まとめ

ここまで、アイリスの出生について、ぐちぐちと書いてきました。
「大長老アイリンは妻と娘がありながら、他の女性と子供を作った」という結論を覆せないか検討しましたが、どうも無理そうです。
この件については、正直、妻との間の子供がまだ4歳なのに、不倫して、他の女性と子供を作ってしまうとか、何を考えているのだろうと思ってしまいます。
大体、肌の色が違う異邦人の妻とその子供に関しては、常日頃から何か悶着があったと見るべきだと思います。
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結婚する時点で周囲の人間は相当反対したのでしょう。多分、大長老はそれを押し切って、結婚したのだと思われます。
「サラの記憶」では、サラが四聖水の継承者の地位に付くことを阻止する為に、サラを殺そうという長老も出てくる始末です。
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こういう背景を考えると、周囲に味方になるような人も少ないであろう母子は、高い地位にいるけど、周りは敵だらけで相当危うい状況にあったと見るべきでしょう。
そもそも大長老アイリンは、「サラの記憶」で戦った後、初対面の筈のプレイヤーから「怪しい老人がサラを狙っていたので、後を追った」という説明を受けて、あっさりと納得しています。
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長老たちはそういう事をやりかねない、という認識があったから、こういう展開になるわけです。
そういう背景があるのなら、尚更、妻と子供を守ってあげないといけないのでは、と思うわけですが…
人間である以上、何か間違いをするのは仕方がないので、これも仕方がなかったという事なのかもしれません。
ただ、アイリスの存在は別の意味で問題を引き起こした可能性があると思っています。
この点については、次の章で触れます。

3.3 継承者問題

そもそもの話なのですが、「サラの記憶」で長老たちがサラを排除しようとしました。その長老たちは後釜に誰を据えるつもりだったのでしょうか?
四聖水の継承者候補を排除する以上、その代わりがいないと話になりません。
多分、継承者をサラにしようと決めたのは、大長老アイリンなのでしょう。
他の人間を継承者にするという話になっていたら、そもそも長老たちがサラを排除する動機がありません。
大長老アイリンがサラを後継者にしようとした理由は、サラが幼いながらも非凡な才能を示していた、単純に長子だったから跡継ぎに指名した、といった複数の理由があったのでしょう。
話をサラの後釜に戻しますけど、長老たちが考えていた後釜は、やっぱり、アイリスなのではないかと思います。
大長老の家に他に分家があって、候補者は他にいるという可能性も考えられますが、そういう存在がいるとは明言されていません。
分家からピンチヒッターを立てるにしても、それはそれで揉めそうです。
サラを排除した後、速やかに継承者を決めないと、混乱が増すばかりなので、誰もが認める人物を候補者に持ってくる必要があります。
そうなると大長老の実子であるアイリスしか残らない気がします。
「サラの記憶」の時点で、アイリスは5歳だったわけで、その存在を隠しきれるとは思えません。
サラを何とか排除したいと考える人間は相当数いたと思われるので、サラに腹違いの兄弟姉妹がいるのなら、そちらを神輿に担ごうという人間が出てきてもおかしくありません。
サラの置かれていた危うい立場を考えれば、こういう動きが出てきてもおかしくないでしょう。
何だか、お家騒動の種を自らの行動で作っている気がして、そういう意味でも、大長老の行動はいかがなものかと思います。

3.4 アイリン家の行方

あれこれと書いてきましたが、結局、アイリン家はフレイヤの策謀の犠牲になったと言っていいでしょう。
「サラの記憶」の事件が起こった直後、図ったようにサラの前にフギンとムニンが現れていますが、これは何らかの方法でフェイヨン内部の内輪もめの情報を掴んでいたからだと思われます。
その後もサラの誤解を解くことなく、彼女がフェイヨンを襲撃しても何も言わないという姿勢を見るに、何らかの目的の為にサラを利用しようとしている事は明らかです。
悪いのはフレイヤ、サラの失踪の原因を作ったフェイヨンの長老たちだと思います。
この様にアイリン家の人々は被害者なのですが、「サラの記憶」の事件やフレイヤの干渉が無ければ、彼らは幸せに暮らせたかというとそれはちょっと怪しいところです。
フレイヤの干渉がなければ、サラがギガンテスを率いて街を強襲する、という事態は避けられます。その為、フェイヨンの人々については大丈夫でしょう。
ただ、アイリン家については、「夫が妻以外の女性と子供を作っている」という事実があり、どうにもならない気がします。
この問題については、フェイヨンの長老、フレイヤの策謀とは全く関係がありません。
「サラの記憶」の時点で、サラは9歳、アイリスは5歳です。
娘たちが事態を理解できる年齢になるのも、そう遠い未来ではなかったと思われます。
2つの家族は1つの街に住んでいて、その夫はフェイヨンの現役のトップだというのですから、周囲の目から関係を隠し切れるとは到底思えません。
大長老は二人の娘を非常に大切に思っていて、姉妹の仲やサラが抱いている誤解を解くことに心を砕いていた事は分かります。
それも大事ですが、正直、2人の娘に対しては、もっと別に説明するあるのではないかと思ってしまいます。
2巻のサラによるフェイヨンの襲撃は、大長老にとっては不意を突かれた出来事です。
サラも問答無用でフェイヨンの関係者を殺しにかかっていたので、その事については話している余裕はなかったのですが…

ここからは少し話を変えて、サラがアイリン家の状況を受け入れる可能性について、検討してみましょう。
ここでサラがアイリスを認知する場面を振り返ることにします。
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…うーん、どうも無理そうですね。
いや、歯をむき出しにして、無茶苦茶怒っている事だけが理由ではなくてですね、このシーンのサラは言外に「夫は妻以外の女性と関係を持つべきでない」と言っているわけです。
こういう表現は些か奇妙ですが、サラは一夫一婦制の支持者なんですよ。
サラが持っている価値観からすると、父親の行為を受け入れる可能性は皆無だと思います。
サラに父親の行為を受け入れさせる道筋は、私にはちょっと思い付きません。
アイリスについては、ちょっと分かりません。
アイリスにとって、父親の行為を否定することは自分の存在を否定することにつながるので、妥協しつつも受け入れるという可能性はあるでしょう。
アイリスがこの問題をどう考えているかは、ちょっと分かりません。
少しネタバレになりますが、アイリスはサラについては、犠牲になったフェイヨンの人々に対する復讐の念が先に立っていて、そういった事に気を回している余裕はないみたいです。
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サラの価値観では、父親の行為を絶対に許せないみたいなので、仮に「サラの記憶」の事件がなくても、父親の行為を知った時点で絶望して、猛烈に反発しそうです。
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話をまとめると、アイリン家に関しては、事件の以前からこういう爆弾を抱えた状態でした。
正直、フェイヨンの長老やフレイヤの干渉がなくても、この問題はいずれ顕在化していたでしょう。
フェイヨンの村が滅びるという悲劇は回避したとしても、アイリン家の家庭崩壊という結果は避けられなかったのではないかと思います。

まとめ

ここまで、2巻のストーリーとその気になる点について、くどくどと書いてきました。
正直、冗長な記述も多いと思いますが、せっかく書いたのでまとめて載せておく事にします。
この巻を見る限り、すべての元凶と言えるのは、サラを排除しようとした長老たちだと思います。
この人達の行為のせいで、フレイヤに付け入る隙を作った挙げ句、四聖水の継承者がフェイヨンから失われるという結果を招いています。
結果を評価すると、フェイヨンはこの長老たちの振る舞いが原因で滅んだと言っても、言い過ぎではないでしょう。
サラの襲撃の巻き添えを食った警備隊、一般市民は、兎も角、長老たちについては正直同情心が湧きません。
力で人を排除しようとした人間が、より強い力で排除されても、文句の言える筋ではない気がします。
良い悪いでいったら、サラの行為は悪いのですけど、長老たちに限れば、それを言う資格はないと思います。

この巻は、RAGNAROK INTO THE ABYSSにおけるターニングポイントであり、ここからすべてのストーリーが事実上始まります。
フェイヨンの村がサラによって滅ぼされたことで、ケイアス、アイリスが旅立つ切っ掛けと動機が与えられ、物語の主要人物がお互いに出会うという意味でも重要でした。
その為、非常にくどくどと気になる点を深堀りしてみました。正直、筆滑りすぎたかもしれません。
サラによるフェイヨン襲撃のエピソードはここまでなので、次回はロキの魔神復活の阻止のストーリーを紹介しようと思います。
正直、この解説を書くのは、結構大変なので、次回以降は2ヶ月以上先にするか、紹介する内容を絞り込もうと思います。

今回はここまでにします。それでは。

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