こんばんは。8月も終わりが見えてきましたが、8月31日にガンホーが運営するMMORPGであるエミル・クロニクル・オンラインが終わります。この件については、5月にサービス終了のお知らせがあった時に記事にしました。
ガンホー運営のMMORPG「エミル・クロニクル・オンライン」が終了するらしいです : RO Breidablik 日記(仮)
エミル・クロニクル・オンラインはサービス終了に向けて、様々なアップデートが行われています。17日にはThanksObjectという街に設置されたオブジェクトに話しかけるだけでレベルが上限まで上がる様になりました。
サービス終了まで2週間を切り、いよいよ終わりが近づいて来ています。
ゲームサービス終了のお知らせ|エミル・クロニクル・オンライン《公式サイト》
8月17日(木)のアップデート内容について|エミル・クロニクル・オンライン《公式サイト》
エミル・クロニクル・オンラインはあと10日ほどで終わるのですが、こうなると気になるのはラグナロクオンラインはどうなるのかという事です。
ラグナロクオンラインを運営するガンホーの決算短信を読むと、去年のガンホーの売上の内、84.3%がパズドラ関連の物らしいです。
平成28年12月期 決算短信〔日本基準〕(連結)
過去に記事にしましたが、一般消費者がインターネット上のサービスを利用するデバイスとしてパソコンからスマートフォンへの急速な移行をしている以上、PC向けのMMORPGに人を集める力があるとはあまり思えません。
ガンホーは、2015年以降、PCオンライン事業とモバイルコンシューマ事業のセグメントに分けて報告していた売上を同一セグメントで報告するようになり、決算書からPCオンライン事業の現状を読み取ることが出来なくなりました。
その為、ガンホーのPCオンライン事業の現状についてはよく分かりません。
ラグナロクオンラインの今後についての少しだけ考えてみた : RO Breidablik 日記(仮)
ラグナロクオンラインは月額課金制にアイテム課金を加えたハイブリッドな体制になっています。
ROの最大接続人数は、大体、1万3000人程度らしいですが、1万3000人が毎月1500円の課金をすると毎月2000万程度の売り上げになります。
パッケージやラグ缶などでアイテム課金をしているユーザーがどれだけいるのかについては、外部から知るすべはありません。
ガンホーが情報を開示していない以上、推測でしかありませんが、ROの売上がガンホー全体の売上に占める割合はあまり高いとは思えません。
しかし、ROが集金力のないタイトルかというと、それは違うと思います。詳しくは後述します。
【速報】ガンホー、16年12月期の営業益は36%減の460億円…「パズドラ」中心にスマホゲームの売上減で | Social Game Info
ガンホー減収減益 「パズドラ」の売上減響く - ITmedia NEWS
ラグナロクオンラインを開発し、2008年にガンホーの子会社となったグラビティですが、NASDAQに上場している企業であり、投資家向けのIRなども公開しています。
各国のラグナロクオンラインは大きく分けて、北米、韓国、台湾・香港・マカオなどのグラビティ直営のROと日本、タイ王国、ブラジルなどのグラビティとライセンス契約を結び現地の会社が経営するROに分かれています。日本のラグナロクオンラインのライセンシーはガンホーです。
グラビティの年次報告書については、過去に記事にしました。
グラビティの2016年の年次報告書を読んで、ラグナロクオンラインのサービスが提供される主要な国のユーザー数の合計は約5万人である事など、興味深い数字が並んでいる事を発見しました : RO Breidablik 日記(仮)
http://rolog.blog.jp/archives/2485662.html
グラビティの2016年の年次報告書によると、事業全体の売上は4269.8万ドル、その内、ラグナロクオンライン関係の売上は2446.1万ドル。売上の57.3%がラグナロクオンライン関係に依存しているとの事です。
グラビティの2016年の年次報告書によると、事業全体の売上は4269.8万ドル、その内、ラグナロクオンライン関係の売上は2446.1万ドル。売上の57.3%がラグナロクオンライン関係に依存しているとの事です。
日本のラグナロクオンライン(以下、JROとする)のロイヤリティおよびライセンス料は703.6万ドルとの事です。この数字はグラビティ全体の売上の16.5%、RO関連事業全体の28.8%です。
この数字はガンホーがグラビティにライセンス料として支払った金額であり、ガンホーはそれ以上の売上をROから得ているものと思われます。
ソフトウェア、プログラム著作権のロイヤルティ率は売上の10%が相場であるらしいですが、この数字を元に計算すると、ROの売上は70億という、ちょっと信じられない数字になります。
2014年度のガンホーのセグメント別の売上を見ると、PCオンライン事業全体の売上は60億だったので、ガンホーとグラビティの間で交わされているロイヤルティ率はもっと高いのではないかと思います。
JROの売上の現状については、よく分からないので、過去の数字を元に推測してみたいと思います。
2012年にリリースしたパズドラがヒットするまでは、ガンホーは売上の75%近くをラグナロクオンラインに依存していました。特定のタイトルに収入の殆どを依存する体制は過去と変わらず危うさも感じますが、オンラインゲームという事業の特殊性を考えると仕方のないことかもしれません。後継のヒット作を出すことが出来ただけ、ガンホーは努力し、結果を出していると思います。
2012年(平成24年)の決算短信によると、ラグナロクオンライン関連の売上は77億4219万円との事です。同じ年のグラビティの日本からのライセンス収入は2238万ドルです。1ドル100円と単純に計算すると、日本円にして22億3800万円です。
平成24年12月期 決算短信〔日本基準〕(連結)
[20-F] 2012 Annual Report
http://www.gravity.co.kr/jp/ir/notice/view.asp?curSeq=463&curpage=5
ガンホーはグラビティに対し、過去にラグナロクオンライン関連の売上の30%程をライセンス料として支払っていた事になります。
2016年度のグラビティの日本からのライセンス収入は703.6万ドルなので、この数字を30%として100%に直すと約2343万ドルとなります。日本円にして、23億4300万円といった所でしょうか。
この数字は過去に発表を元にした推測でしかなく、根拠は非常に薄弱です。
しかし、ROのログイン数をまとめたサイトによると2012年のROの最大接続人数は4万人程度との事です。現在のROの最大接続人数は1万3000人程度なので、2012年の30%程度の数字です。
ラグナロクオンラインの接続人数(2017) | 千里の道も一歩から
ユーザーの人口に比例して売り上げも下がったと考えると、ガンホーの現在のラグナロクオンライン関連の売上が2012年度の30%である23億4300万円程度ではないかという推測も、まったく根拠のないとは言い切れない気がします。
現在のガンホーにとって、24億の売上というのは会社の命運を左右する数字ではないと思いますが、無視できるほど小さいのものとも思えません。
ラグナロクオンラインのユーザーとして気になるのは、RO関係の売上がどれだけ下がってしまうとサービスが終わってしまうのかという事ですが、この件に関してはガンホーの経営陣が判断する事なので分かりません。
ただし、ラグナロクオンラインの開発元であるグラビティとガンホーの間には複雑な関係があり、売上が下がったからサービスを打ち切るとは簡単には言えない事情があるのではないかと思います。
ガンホーとしては、最早、ラグナロクオンラインの売上は会社にとって重要とはいえない数字なのかもしれませんが、グラビティは売上の内、57.3%を未だにラグナロクオンライン関係の物に頼っているという捻れがあります。
また、グラビティは前述の通り、株式の59.3%をガンホーが所有する子会社なのですが、ガンホーの代表取締役である森下一喜氏、同社の役員である北村佳紀氏は2008年からグラビティの取締役を兼任しています。
この事はグラビティの過去の年次報告書からも確認することが出来ます。2008年当時、ガンホーの売上の大半はラグナロクオンライン関係の物を占めていたので、そのライセンサーであるグラビティの取締役を兼務するという選択は当時において合理性があったと思います。
ガンホーにとって、ラグナロクオンラインからの収入はあまり重要ではないのかもしれませんが、グラビティにとってJROからのライセンス収入はグラビティ全体の売上の16.5%、RO関連事業全体の28.8%を占める大きな物です。
グラビティにとって、ラグナロクオンライン以外の稼ぎ頭がいない状態でJROが終了してしまう事は絶対に避けなければならないシナリオでしょう。
ガンホーの代表取締役である森下一喜氏、同社の役員である北村佳紀氏はグラビティの取締役も兼務している以上、グラビティの経営にも責任があるのではないでしょうか。親会社の都合で子会社の事業に深刻なダメージを与える決定を下すことが許されるかは、議論の余地があるでしょう。
2008年から取締役会に参加している以上、グラビティが未だにラグナロクオンラインという過去の遺産に売上の6割近くを頼るような状態であり続けている事への責任が問われても仕方がないと思います。
仮に売上の不振からJROのサービスを打ち切るとすれば、グラビティがNASDAQに上場している企業である以上、他の株主から経営陣への批判が吹き出すでしょうし、グラビティの取締役としての責任を森下一喜氏と北村佳紀氏は追求される事でしょう。
JROの今後について、重要な決定をガンホーの経営陣が下すとすれば、親会社の代表取締役社長と取締役が子会社の取締役を兼務するという人事やガンホーとグラビティから見たラグナロクオンライン関連の事業の重要性の相反や乖離といった複雑な関係を精算する事が求められると思います。
ラグナロクオンラインは2001年に開発され、2002年にリリースされた過去のタイトルです。2004年にはユーザー数が10万人を突破し、活況を呈しましたが、その後はユーザーが右肩下がりであり、一般消費者がパソコンからスマートフォンへ急速にシフトしているという環境の変化を考慮すると、PC向けのMMORPGに人を集める事は難しいと思われます。
ガンホーからグラビティへのライセンス料の金額が減っている事から、その金額に比例し、JROの売上も減っているものと思われます。
ラグナロクオンラインを取り巻く状況は非常に厳しいものがありますが、何とか現状を維持し、ユーザーの更なる脱落を防いで欲しいと願う次第です。
プレイヤーとして、今後も日本のラグナロクオンラインについての考察をまとめたいと思います。
今回はここまでにします。それでは。