こんばんは。2019年の精錬祭こと「荘厳火麗!! アマツ夜桜千本参り」が開催されていますが、閲覧者の皆様は成果はいかがでしょうか。
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私は初日にガーデンオブエデンを+7にした後は、成果が出せていません。
ミラクル精錬の機会はまだ残っているので、残りの機会を活かして、準備してきたアイテムの精錬を成功させようと思っています。
JROの春といえば、精錬祭なのですが、実はこの時期にはラグナロクオンラインに関する興味深い情報が公開される時期でもあります。
具体的には、ラグナロクオンラインの開発会社であるグラビティの年次報告書が発表される時期です。
グラビティは米国のNASDAQ市場に上場している為、投資家向けの広報活動であるIRも盛んに行っています。
去年も同じ時期に公開された年次報告書について、情報をまとめた記事を書きました。

グラビティが2017年度年次報告書を公表していたので、その中から重要そうな情報を抜粋してまとめてみました : RO Breidablik 日記(仮)

JROはガンホーが運営する事業ではありますが、2012年以降、売上に占める割合が減少した為か、ガンホーからはあまり情報が公開されなくなりました。
その為、ラグナロクオンラインの事業の現状を把握するには、グラビティの年次報告書が一番詳しい資料と言えると考えられます。
その理由はグラビティにとって、ラグナロクオンラインの知的財産を活かした事業が中核を占めている為、関連する事業に関して、積極的な情報公開を行っている為です。
今回はJROの今後を考える為、グラビティの年次報告書について、記事をまとめることにします。

1. 文書作成の目的

この文書は、グラビティの2018年度の年次報告書の内容を検討し、ラグナロクオンラインに関する現状の情報を整理し、紹介する目的で執筆する。
この文書内では、従来から存在するラグナロクオンラインをPC版ラグナロクオンラインと呼称する。
また、ラグナロクオンラインの知的財産を元にモバイル向けに開発されたグラビティのMMORPGをラグナロクオンラインモバイルと呼称し、前者と区別する。

2. グラビティの2018年度の売上等の情報について

グラビティは米国のNASDAQ市場に上場している為、IRで積極的に情報を公開している。
特に毎年4月末に公表される年次報告書は、前年の同社の事業の総括として出される為、その中にはラグナロクオンラインの事情に関する情報が多く含まれている。
今回は先日公表された2018年の年次報告書からラグナロクオンラインに関係する情報を整理し、紹介する。

[20-F] 2018 Annual Report

GRAVITY OFFICIAL - | SEC Filings

2.1 グラビティ全体の売上

2018年のグラビティの総収入は2億5769万ドルである。
前年の売上は1億3267万8000ドルだったので、約2倍近い数字である。
2016年度の総収入が4269万8000ドルであったことを考えると、3年連続で増収増益となっている。
この数字は素直に評価されて良いのではないだろうか。これだけの増収増益を成し遂げるのは、どの企業にも出来ることではない。
総収入の中にあるRO関係の数字については、2.2と2.4で検討する。

グラビティ売り上げ 2017年 2018年
売上高 1億3267万8000ドル 2億5769万0000ドル
売上高(日本円) 132億6780万0000円 257億6900万0000円
割合 100.00% 100.00%
RO関連売上高 3511万6000ドル 2875万0000ドル
RO関連売上高(日本円) 35億1160万0000円 28億7500万0000円
RO関連売上高割合 26.47% 11.16%
JROからのライセンス収入 881万0000ドル 848万2000ドル
JROからのライセンス収入(日本円) 8億8100万0000円 8億4820万0000円
JROからのライセンス収入の割合(売上高) 6.64% 3.29%
JROからのライセンス収入の割合(RO関連売上高) 25.09% 29.50%

2.2 PC版ラグナロクオンラインが全体に占める割合

2018年のラグナロクオンライン関連の売上は、2875万ドルである。
この数字は売上全体の11.16%である。2017年度の数字は26.47%だった。
売上そのものは前年と比較すると700万ドルほど下がっている。
日本円にすると29億円程度である。
この数字は小さなものではないが、売上全体に占める割合は下がっていることから、グラビティから見たPC版ラグナロクオンラインの事業の重要性は小さくなってきているものと考えられる。
ラグナロクオンラインモバイルの事業が本格的に始まる以前の2016年度の場合、PC版ラグナロクオンラインの売上は総収入の57.29%だった。
グラビティは事業の軸足を、PC版ラグナロクオンラインからラグナロクオンラインモバイルへと移行していることが伺える。

余談だが、過去の数字から推測した場合、ガンホーからグラビティに支払われるROのライセンス料は、RO関連の売上の30%らしい。
2018年にグラビティはJROからのライセンス料として、848万2000ドルの収入を得ている。
この数字を元に計算すると、ガンホーのJROの売上は日本円で28億2733万3333円となる。
ガンホー・オンライン・エンターテイメントの2018年の売り上げは、921億0100万円だった。
ガンホーから見て、JROの事業の売上が全体に占める割合は、3.07%程度ではないだろうか。

ガンホー・オンライン・エンターテイメント売り上げ 2017年 2018年
売上高 923億0600万0000円 921億0100万0000円
割合 100.00% 100.00%
RO関連売上高 29億3666万6667円? 28億2733万3333円?
割合 3.18%? 3.07%?
ライセンスの支払いが占める割合 30.00%? 30.00%?

2.3 PC版ラグナロクオンラインの各国別売上

PC版ラグナロクオンラインの国別の売上と売上に占める割合は下記の通りである。
台湾・香港・マカオ、韓国、アメリカ・カナダはグラビティがサービスを提供している為、サブスクリプション収入はグラビティに直接入る。
それ以外の国と地域は、現地のライセンシーが運営し、ライセンス料などをグラビティに支払っている。
日本のライセンシーはガンホー・オンライン・エンターテイメント株式会社である。
各国の売上とその割合で評価すると、PC版ラグナロクオンラインの売上の80%程度が日本、中国、韓国といった東アジア地域で産み出されている事が分かる。
PC版ラグナロクオンラインは提供されている地域は幅広いが、売上という実態で評価すると東アジアに主体があるローカルなMMORPGであると評価できる。
PC版ラグナロクオンラインの今後については、日中韓の国と地域のユーザーの動向によって左右されることになるだろう。
ここで中華人民共和国、中華民国(台湾)を区別せずにまとめたが、これは何かを意図してものではない。
このブログは東アジアの政治問題を取り扱うものではないので、台湾が独立国なのか、中華人民共和国の一部であるのかといった問題にはこれ以上は触れない。

PC版ラグナロクオンラインの国別の売上 2017年 2018年
台湾・香港・マカオ 1414万1000ドル 875万7000ドル
韓国 455万5000ドル 597万1000ドル
アメリカ・カナダ 300万5000ドル 255万2000ドル
サブスクリプション小計 2170万1000ドル 1728万0000ドル
日本 881万0000ドル 848万2000ドル
タイ 189万8000ドル 127万9000ドル
ブラジル 81万2000ドル 57万6000ドル
フィリピン 82万7000ドル 47万9000ドル
インドネシア 66万6000ドル 20万7000ドル
ヨーロッパ 12万6000ドル 7万9000ドル
その他 27万6000ドル 36万8000ドル
ライセンス収入小計 1341万5000ドル 1147万0000ドル
合計 3511万6000ドル 2875万0000ドル
中国・韓国・北米はグラビティ直営
その他の地域は現地のライセンシーが運営し、ライセンス料を支払う

PC版ラグナロクオンラインの国別の売上に占める割合 2017年 2018年
台湾・香港・マカオ 40.27% 30.46%
韓国 12.97% 20.77%
アメリカ・カナダ 8.56% 8.88%
サブスクリプション小計 61.80% 60.10%
日本 25.09% 29.50%
タイ 5.40% 4.45%
ブラジル 2.31% 2.00%
フィリピン 2.36% 1.67%
インドネシア 1.90% 0.72%
ヨーロッパ 0.36% 0.27%
その他 0.79% 1.28%
ライセンス収入小計 38.20% 39.90%
合計 100.00% 100.00%

PC版ラグナロクオンラインの国別の売上に占める割合 2017年 2018年
東アジア(日本・中国・韓国) 78% 81%
それ以外の地域 22% 19%

2.4 PC版ラグナロクオンラインのユーザー数について

2018年の年次報告書に記載されたPC版ラグナロクオンラインのユーザー数は下記の通りである。
日本、アメリカ合衆国、大韓民国、中華民国(台湾)、中華人民共和国の数字だけが公開されている。
台湾を国として扱うかどうかは、政治的にデリケートな問題である為か、台湾は香港、マカオなどと一括りにした区分にまとめられている。
PC版ラグナロクオンラインのサービスは、ブラジル、フィリピン、インドネシア、ヨーロッパ等でも展開されているが、これらの地域から得られるライセンス料の数字も小さい為、ユーザー数も少人数に留まっているのだろう。
その為、これらの地域については掲載を見送ったものと考えられる。
全体的に減少傾向だが、韓国、北米の落ち込みが目立っている。
2018年には、過去のラグナロクオンラインを再現する施策が各国で展開された。
上記の施策の韓国での呼称はRagnarok:Zero、北米での呼称はRagnarok Online RE:STARTである。
Ragnarok:Zeroの開始直後の数字では、韓国のユーザー数はだいぶ伸びていた筈だが、現状の数字を見る限り、これらの施策は成功しなかったものと思われる。

ROユーザー数推移 2017 2018
主要国数 4 4
主要国合計(PCU) 45,438 31,247
主要国合計(ACU) 24,004 16,383
東アジア合計(PCU) 39,074 27,955
東アジア合計(ACU) 18,579 13,787
東アジア割合(PCU) 85.99% 89.46%
日米韓(PCU) 22,691 14,927
日米韓(ACU) 10,685 7,567
日米韓割合(PCU) 49.94% 47.77%
日本(PCU) 11,254 9,805
日本(ACU) 4,643 4,454
日本割合(PCU) 24.77% 31.38%
韓国(PCU) 11,437 5,122
韓国(ACU) 6,042 3,113
韓国割合(PCU) 25.17% 16.39%
北米(PCU) 6,364 3,292
北米(ACU) 5,425 2,596
北米割合(PCU) 14.01% 10.54%
台湾・香港・マカオ(PCU) 16,383 13,028
台湾・香港・マカオ(ACU) 7,894 6,220
台湾・香港・マカオ割合(PCU) 36.06% 41.69%
PCU:ピーク同時ユーザー数
ACU:平均同時ユーザー数

2.5 モバイルゲームとアプリケーションの売上について

「当社の事業に関連するリスク」によると、総収入の内、ラグナロクオンラインモバイルが占める割合は、75.1%とのことである。
モバイル関連の売上は、2億1520万3000ドルである。この数字は総収入の83.51%に達する。
2.2でも触れたが、グラビティは事業の軸足を、PC版ラグナロクオンラインからモバイルゲームに移している。
これはグラビティの今後を考えれば、当然の選択であると言えるだろう。
PC版ラグナロクオンラインは、既にレガシーなMMORPGと言える。ROの事業で売上とユーザー数を増やすのは難しいだろう。

モバイルゲームとアプリケーションの売上 2016年 2017年 2018年
台湾・香港・マカオ 115万6000ドル 4721万7000ドル 7527万5000ドル
韓国 540万5000ドル 1607万4000ドル 5927万4000ドル
タイ - 400万4000ドル 3788万4000ドル
フィリピン - - 1275万0000ドル
インドネシア - - 795万3000ドル
中国 174万3000ドル 360万5000ドル 257万4000ドル
アメリカ 100万0000ドル 246万8000ドル 605万3000ドル
日本 57万0000ドル - -
その他 12万9000ドル 403万8000ドル 1344万0000ドル
合計 1000万3000ドル 7740万6000ドル 2億1520万3000ドル

モバイル関連売上が全体に占める割合 2016年 2017年 2018年
割合 23.43% 58.34% 83.51%

ラグナロクオンラインモバイルの売上が全体に占める割合 2018年
割合 75.10%

2.6 ライセンス期間

JROのライセンスの有効期限は、2019年9月までである。
その為、少なくともこの日までは、ラグナロクオンラインの日本でのサービスは続くだろう。
ライセンスが更新されるかは不明である。
しかし、ガンホーにとっても創業当時からの事業であり、またイグドラシルワールドなどの企画を始めたばかりという事情を考えると、余程の事がない限りはライセンスは更新されるのではないだろうか。

2.7 ガンホーとグラビティの関係

ガンホーのグラビティの関係は、2002年のJROのβテスト時に日本国内独占配信、販売権の契約を結んでから現在まで続いている。
ガンホーがグラビティを買収し、子会社化したのは2008年の事である。
2008年年度グラビティの年次報告書の取締役会の名簿でも、ガンホーの代表取締役社長の森下一喜氏と取締役である坂井一也氏の名前を確認できる。
この状態は2018年になっても基本的に変わっていない。
2018年現在、ガンホーが保有するグラビティの株式は全体の59.3%とのことである。この数字は2017年度と変わらない。
ラグナロクオンラインモバイルの事業が成功し、日本でのサービス開始も囁かれるという状況を踏まえると、両社の関係は今後も続いていくと思われる。
特にラグナロクオンラインモバイルの事業は開始したばかりであり、まだまだこれからという状況である事を踏まえると尚更だろう。

ガンホーが保有するグラビティの株式 2017年 2018年
割合 59.30% 59.30%

2.8 グラビティの今後

ラグナロクオンラインモバイルの成功により、前年を上回る増収増益となった。
これは素直に評価されるべきだが、ラグナロクオンラインモバイルによる増益が続く間に次の事業をどう立ち上げるかが課題になるだろう。
ラグナロクオンラインモバイルのサービスはまだまだこれからという状況であるので、2019年もこの事業を推進する事になるだろう。
ラグナロクオンラインモバイルは、2017年から中華人民共和国、2018年には韓国、東南アジアでサービスが開始された。
2019年1月からは、北米、南米、オセアニアでもサービスが開始されるなど、アプリの配信される地域は順調に増えている。
今後は、予定されている日本での配信の開始時期とその成否が売上に大きな影響を与えるかもしれない。
ラグナロクオンラインモバイルの成功の一方で、PC版ラグナロクオンラインを取り巻く環境と数字は芳しいものとは言えない。
状況は厳しいが、2001年に開発が開始されたレガシーなMMORPGが現在まで持ちこたえていることは一つの実績と評価すべきだろう。
正式サービス開始当時、様々なMMORPGが競合として存在したが、現在までサービスを継続しているタイトルは限られる。
PC版ラグナロクオンライン関連の売上は、全体に占める割合こそ下がっているが、事業を支えられない程、小さな物でもないだろう。
中長期的にはどうなるかは分からないが、あと2~3年はサービスが続くのではないだろうか。
その後については売上とユーザー数の数字次第という事になるのではないかと考える。

以上で今回の記事を終わりにします。
去年に引き続き、グラビティの年次報告書からラグナロクオンライン関係の記述を抜粋してみました。
ラグナロクオンラインモバイル関連の売上が急増していることなど、現状を把握するのを助ける情報が多くありました。
前述の通り、PC版ラグナロクオンラインの事業は厳しい状況にあると思われますが、イグドラシルワールドの企画が本格的に開始されるなど、ガンホーはラグナロクオンラインの事業に意欲を持っている様です。
数年先にどうなっているかは不明なのですが、少なくともしばらくの間はラグナロクオンラインのサービスは続いていくのではないでしょうか。

今回はここまでします。それでは。

参考資料
ガンホー、子会社Gravityの『Ragnarok M』は配信1ヶ月弱で東南アジア地域で500万DLを突破! 現在は日本配信に向けて準備中! | Social Game Info
http://secure.gamebiz.jp/?p=230926

説明会資料|ガンホー・オンライン・エンターテイメント株式会社
https://www.gungho.co.jp/jp/ir/library/presentation.html

沿革|ガンホー・オンライン・エンターテイメント株式会社
https://www.gungho.co.jp/jp/company/history.html

ガンホー、韓国Gravityを子会社化。「ラグナロクオンライン」シリーズのライセンスを確保
https://game.watch.impress.co.jp/docs/20080214/gungho.htm