こんにちは。
新型コロナウイルス感染症が世界的に流行していますが、閲覧者の皆様はいかがお過ごしでしょうか。
現在、日本政府による緊急事態宣言が発令されています。閲覧者の方も健康に気を付けて、この危機を乗り切っていけることを祈ります。
この感染症の影響なのかは明言されていませんが、4月の精錬祭が延期になるなど、ラグナロクオンラインのゲーム内でも影響が出てきているようです。

4月のイベント、アップデートスケジュール一部変更のお知らせ| ラグナロクオンライン公式サイト

日本政府による緊急事態宣言も5月末まで延長された事もあり、予定されていたイベントは今後は延期や中止といった事があるかもしれません。
暗い話題ですが、日本国内で展開されているサービスである以上、国内の情勢によって、影響を受けることは避けられないでしょう。
今後どうなるかは分かりませんが、夏ぐらいには正常な状態に戻ることを期待したいと思います。
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それとは話は変わりますが、毎年4月の最終週はグラビティの年次報告書が公開される時期でもあります。
グラビティは言うまでもなく、ラグナロクオンラインの開発会社なのですが、同社は米国のNASDAQ市場に上場している為、投資家向けの広報活動であるIRも盛んに行っています。
この年次報告書には、グラビティによって、ラグナロクオンライン関連の情報が多く公開されています。
日本でラグナロクオンラインのサービスを展開しているのは、ガンホー・オンライン・エンターテイメントですが、同社は2013年以降、PCオンライン事業の数字を公開しなくなりました。
ガンホーがラグナロクオンラインに関する情報を開示しなくなった理由は、2013年以降、パズドラのヒットにより、ROが売上に占める割合が急減した事が理由でしょう。
その為、グラビティの年次報告書が、ラグナロクオンラインの現状を把握するのに一番詳しい資料であると言えるでしょう。
今回は去年に引き続き、グラビティの年次報告書の中から、ラグナロクオンラインに関係する記述を紹介し、同ゲームを取り巻く環境を整理していきたいと思います。
過去に書いた同様の記事は、このブログの下記のカテゴリにまとめてあるので、ご興味ある方はご覧いただけると幸いです。

グラビティ、ガンホー : RO Breidablik 日記(仮)

1. 文書作成の目的

この文書は、グラビティの2019年度の年次報告書の内容を検討し、ラグナロクオンラインに関する現状の情報を整理し、紹介する目的で執筆する。
この文書内では、従来から存在するラグナロクオンラインをPC版ラグナロクオンラインと呼称する。
また、ラグナロクオンラインの知的財産を元にモバイル向けに開発されたグラビティのMMORPGをRagnarok Mと呼称し、前者と区別する。
この文書の表では、比較の為、Ragnarok Mのサービスが開始される前の2016年からの数字を掲載する。

2. グラビティの2019年度の売上等の情報について

グラビティは米国のNASDAQ市場に上場している為、IRで積極的に情報を公開している。
特に毎年4月末に公表される年次報告書は、前年の同社の事業の総括として出される為、その中にはラグナロクオンラインの事情に関する情報が多く含まれている。
今回は先日公表された2019年の年次報告書からラグナロクオンラインに関係する情報を整理し、紹介する。

[20-F] 2019 Annual Report

GRAVITY OFFICIAL - | SEC Filings

2.1 グラビティ全体の売上

グラビティの2019年の総収入(売上高)は、3億1240万1000ドルである。
前年に比べ、121.23%であり、増収増益となっている。
売上高の伸びは鈍化しつつあるが、相変わらず堅調である。
鈍化の理由は、2017年にサービスを開始したRagnarok Mの勢いが下がっているからだと思われるが、これも事業の性質を考えると、健闘していると言えるのではないだろうか。
売上の内、モバイル関連の売上が83.64%と大半を占めている。
後述するが、これはRagnarok M関連の売上が大半を占めている。
2016年以前は、ラグナロクオンライン関連の売上が売上の大半を占めていたが、グラビティは事業の軸足をモバイルへと移行したことが伺える。
1つのタイトルに収益の大半を依存する状態には代わりはないが、これもオンラインゲームという事業の性質の結果と見るべきではないだろうか。
尚、この表の日本円の売上は1ドル100円で計算した為、実際の数字は上下する可能性がある。

グラビティ売り上げ 2016年 2017年 2018年 2019年
売上高 4269万8000ドル 1億3267万8000ドル 2億5769万0000ドル 3億1240万1000ドル
売上高(日本円) 42億6980万0000円 132億6780万0000円 257億6900万0000円 312億4010万0000円
割合 100.00% 100.00% 100.00% 100.00%
前年比 140.01% 310.74% 194.22% 121.23%
モバイルゲームとアプリケーションの売上高 1000万3000ドル 7740万6000ドル 2億1520万3000ドル 2億6128万4000ドル
モバイルゲームとアプリケーションの売上高(日本円) 10億0030万0000円 77億4060万0000円 215億2030万0000円 261億2840万0000円
モバイルゲームとアプリケーションの売上高(割合) 23.43% 58.34% 83.51% 83.64%
RO関連売上高 2446万1000ドル 3511万6000ドル 2875万0000ドル 3289万8000ドル
RO関連売上高(日本円) 24億4610万0000円 35億1160万0000円 28億7500万0000円 32億8980万0000円
RO関連売上高割合 57.29% 26.47% 11.16% 10.53%
JROからのライセンス収入 703万6000ドル 881万0000ドル 848万2000ドル 808万1000ドル
JROからのライセンス収入(日本円) 7億0360万0000円 8億8100万0000円 8億4820万0000円 8億0810万0000円
JROからのライセンス収入の割合(売上高) 16.48% 6.64% 3.29% 2.59%
JROからのライセンス収入の割合(RO関連売上高) 28.76% 25.09% 29.50% 24.56%

2.2 PC版ラグナロクオンライン概況

PC版ラグナロクオンラインの国別の売上と売上に占める割合は下記の通りである。
台湾・香港・マカオ、韓国、アメリカ・カナダはグラビティがサービスを提供している為、サブスクリプション収入はグラビティに直接入る。
ブラジル、インドネシアがサブスクリプション収入に入っているが、これは現地のライセンシーのサービスが終了し、その後、グラビティの子会社によって、サービスが運営されている為である。
それ以外の国と地域は、現地のライセンシーが運営し、ライセンス料などをグラビティに支払っている。
2019年の売上高は、3289万8000ドルである。

2.3 PC版ラグナロクオンラインが全体に占める割合

2019年の売上高は、3289万8000ドルである。これはグラビティ全体の売上の約10%である。
2016年度以降、売上全体に占める割合は下がり続けている。
割合としては小さくなったが、PC版ラグナロクオンライン関連の売上高は3000万ドル以上と無視できない数字になっている。
2016年以降、上下しつつも3000万ドル程度の数字で推移している。

PC版ラグナロクオンラインの売上と全体に占める割合 2016年 2017年 2018年 2019年
売上高 2446万1000ドル 3511万6000ドル 2875万0000ドル 3289万8000ドル
割合 57.29% 26.47% 11.16% 10.53%

2.4 PC版ラグナロクオンラインの各国別売上

PC版ラグナロクオンラインの日本からのライセンス収入は、808万1000ドルである。
この数字を1ドル100円として、日本円に直すと8億810万円となる。
前年と比べて下がっているが、大幅に下がったという程ではない。
PC版ラグナロクオンラインの売上高の内、24.56%をJROからのライセンス収入が占めている。
この数字は全世界で2位である。1位は台湾・香港・マカオの1470万3000ドルである。
売上の大半を日中韓の3カ国で生み出されているという事情は去年と変化がない。
売上の割合で評価すると、PC版ラグナロクオンラインは、東アジアをベースに展開されるローカルなMMORPGであると言えるだろう。
ここで中華人民共和国、中華民国(台湾)を区別せずにまとめたが、これは何かを意図してものではない。
このブログは東アジアの政治問題を取り扱うものではないので、台湾が独立国なのか、中華人民共和国の一部であるのかといった問題にはこれ以上は触れない。

PC版ラグナロクオンラインの国別の売上 2016年 2017年 2018年 2019年
台湾・香港・マカオ 915万4000ドル 1414万1000ドル 875万7000ドル 1470万3000ドル
韓国 359万9000ドル 455万5000ドル 597万1000ドル 537万5000ドル
アメリカ・カナダ 180万9000ドル 300万5000ドル 255万2000ドル 120万0000ドル
ブラジル - - - 175万8000ドル
インドネシア - - - 40万7000ドル
サブスクリプション小計 1456万2000ドル 2170万1000ドル 1728万0000ドル 2344万3000ドル
日本 703万6000ドル 881万0000ドル 848万2000ドル 808万1000ドル
台湾・香港・マカオ 42万1000ドル - - -
タイ 179万9000ドル 189万8000ドル 127万9000ドル 65万8000ドル
ブラジル 43万9000ドル 81万2000ドル 57万6000ドル -
フィリピン - 82万7000ドル 47万9000ドル 31万5000ドル
インドネシア 8万8000ドル 66万6000ドル 20万7000ドル 5万4000ドル
ヨーロッパ 11万6000ドル 12万6000ドル 7万9000ドル 4万3000ドル
その他 - 27万6000ドル 36万8000ドル 30万4000ドル
ライセンス収入小計 989万9000ドル 1341万5000ドル 1147万0000ドル 945万5000ドル
合計 2446万1000ドル 3511万6000ドル 2875万0000ドル 3289万8000ドル
中国・韓国・北米はグラビティ直営
その他の地域は現地のライセンシーが運営し、ライセンス料を支払う

PC版ラグナロクオンラインの国別の売上に占める割合 2016年 2017年 2018年 2019年
台湾・香港・マカオ 37.42% 40.27% 30.46% 44.69%
韓国 14.71% 12.97% 20.77% 16.34%
アメリカ・カナダ 7.40% 8.56% 8.88% 3.65%
ブラジル - - - 5.34%
インドネシア - - - 1.24%
サブスクリプション小計 59.53% 61.80% 60.10% 71.26%
日本 28.76% 25.09% 29.50% 24.56%
台湾・香港・マカオ 1.72% - - -
タイ 7.35% 5.40% 4.45% 2.00%
ブラジル 1.79% 2.31% 2.00% -
フィリピン - 2.36% 1.67% 0.96%
インドネシア 0.36% 1.90% 0.72% 0.16%
ヨーロッパ 0.47% 0.36% 0.27% 0.13%
その他 - 0.79% 1.28% 0.92%
ライセンス収入小計 40.47% 38.20% 39.90% 28.74%
合計 100.00% 100.00% 100.00% 100.00%

PC版ラグナロクオンラインの国別の売上に占める割合 2016年 2017年 2018年 2019年
東アジア(日本・中国・韓国) 83% 78% 81% 86%
それ以外の地域 17% 22% 19% 14%

2.5 日本のラグナロクオンラインの売上高についての推測

PC版ラグナロクオンラインの日本での売上高については、2013年までガンホー・オンライン・エンターテイメントの決算資料で具体的な数字が公表されていたが、それ以降は記載がない。
2013年までの実績では、RO関連の売上の約30%がガンホーからグラビティへライセンス料として支払われている事が分かる。
売上とライセンス料の数字については、為替相場などの影響からか計算してみると30%にはならない為、この数字も推測である。
グラビティの日本からのライセンス収入を以前と変わらず30%として考え、これを100%に直した数字を、ガンホーのRO関連の売上と仮定し、数字を出す。
その場合、ガンホーのRO関連の売上は、26億9366万6667円となる。

ガンホー・オンライン・エンターテイメント売り上げ 2016年 2017年 2018年 2019年
売上高 1124億5700万0000円 923億0600万0000円 921億0100万0000円 1013億9200万0000円
割合 100.00% 100.00% 100.00% 100.00%
RO関連売上高 23億4533万3333円? 29億3666万6667円? 28億2733万3333円? 26億9366万6667円?
割合 2.09%? 3.18%? 3.07%? 2.66%?
ライセンスの支払いが占める割合 30.00%? 30.00%? 30.00%? 30.00%?

この数字はあくまでも推測である。
過去に支払われたライセンス料の売上に対する割合と日本からのライセンス収入から計算した。
ただ、他のライセンシーとの関係、親会社と子会社の取引という事情を考えると、30%という数字を安易に動かせるとは思えず、これに近い数字なのではないかと推測する次第である。
余談だが、この数字はガンホー全体の売上の2.66%程度である。

決算短信|ガンホー・オンライン・エンターテイメント株式会社

2019年12月期 決算短信〔日本基準〕(連結)

ガンホー、2019年12月期は『パズドラ』好調を受けて増収増益 売上高は10%増の1013億円と大台回復、営業益も6.7%増の283億円に | Social Game Info

2.6 PC版ラグナロクオンラインのユーザー数について

グラビティの集計よれば、PC版ラグナロクオンラインの主要国のユーザー数は、40,951人である。
この場合の主要国は、日本、大韓民国、台湾、アメリカ合衆国である。中華人民共和国本土のユーザー数は、2010年までしか公表されてない。
前年は31,247人であった為、ユーザー数は増加している。日本のユーザー数は昨年と変わらずに減少傾向にある。
ユーザー数の増加が増加している地域は、韓国、台湾・香港・マカオ、北米である。
ユーザー数が増加した理由は不明だが、Ragnarok:Zeroなどのクラシック版ROを展開した地域と符合する。
その為、これらの施策がユーザー数の増加につながった可能性が考えられる。

ROユーザー数推移 2016 2017 2018 2019
主要国数 4 4 4 4
主要国合計(PCU) 50,131 45,438 31,247 40,951
主要国合計(ACU) 29,060 24,004 16,383 21,906
東アジア合計(PCU) 43,729 39,074 27,955 34,195
東アジア合計(ACU) 23,710 18,579 13,787 17,709
東アジア割合(PCU) 87.23% 85.99% 89.46% 83.50%
日米韓(PCU) 17,653 22,691 14,927 17,221
日米韓(ACU) 7,943 10,685 7,567 7,991
日米韓割合(PCU) 35.21% 49.94% 47.77% 42.05%
日本(PCU) 13,165 11,254 9,805 9,154
日本(ACU) 5,136 4,643 4,454 3,977
日本割合(PCU) 26.26% 24.77% 31.38% 22.35%
韓国(PCU) 4,488 11,437 5,122 8,067
韓国(ACU) 2,807 6,042 3,113 4,014
韓国割合(PCU) 8.95% 25.17% 16.39% 19.70%
北米(PCU) 6,402 6,364 3,292 6,756
北米(ACU) 5,350 5,425 2,596 4,197
北米割合(PCU) 12.77% 14.01% 10.54% 16.50%
台湾・香港・マカオ(PCU) 26,076 16,383 13,028 16,974
台湾・香港・マカオ(ACU) 15,767 7,894 6,220 9,718
台湾・香港・マカオ割合(PCU) 52.02% 36.06% 41.69% 41.45%
PCU:ピーク同時ユーザー数
ACU:平均同時ユーザー数

2.7 モバイルゲームとアプリケーションの売上について

モバイル関連の売上は、2億6128万4000ドルである。
この数字は総収入の83.64%を占める。
また、年次報告書の事業のリスクの欄によると、Ragnarok Mの売上は全体の80%との事である。
Ragnarok M以外のスマートフォン向けゲームは8種類ほどリリースしている様だが、売上にはあまり貢献していない。
2018年の実績と比較すると、台湾と韓国の売上が落ち込む一方、タイ王国とアメリカ合衆国の数字の伸びが目立つ。
また国別の売上に占める割合を評価すると、PC版ラグナロクオンラインとは対象的に、東アジアの国と地域の売上は全体の24%程度である。
これは全世界でのサービスの展開に成功している事を意味している。
特定の国と地域にあまりに売上が集中する状況は、カントリーリスクを考慮するとリスクが高い。
特に東アジアは中華人民共和国と中華民国(台湾)、大韓民国と朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)など、安全保障上のリスクを抱える地域が多くある為、これらの地域に収益を依存していない事はリスク分散の意味で好ましいと言えるだろう。

モバイルゲームとアプリケーションの売上 2016年 2017年 2018年 2019年
台湾・香港・マカオ 115万6000ドル 4721万7000ドル 7527万5000ドル 2761万8000ドル
韓国 540万5000ドル 1607万4000ドル 5927万4000ドル 1912万1000ドル
タイ - 400万4000ドル 3788万4000ドル 5297万8000ドル
フィリピン - - 1275万0000ドル 2650万6000ドル
インドネシア - - 795万3000ドル 1888万4000ドル
中国 174万3000ドル 360万5000ドル 257万4000ドル -
アメリカ 100万0000ドル 246万8000ドル 605万3000ドル 4607万9000ドル
日本 57万0000ドル - - 1647万2000ドル
マレーシア - - - 1161万1000ドル
シンガポール - - - 1207万9000ドル
ブラジル - - - 683万6000ドル
その他 12万9000ドル 403万8000ドル 1344万0000ドル 23100万0000ドル
合計 1000万3000ドル 7740万6000ドル 2億1520万3000ドル 2億6128万4000ドル

mobile_sales1
mobile_sales2

モバイル関連売上が全体に占める割合 2016年 2017年 2018年 2019年
割合 23.43% 58.34% 83.51% 83.64%

ラグナロクオンラインモバイルの売上が全体に占める割合 2018年 2019年
割合 75.10% 80.00%

2.8 ライセンス期間

現在のJROのライセンス期間は、2021年9月までである。
余程のことがない限り、この日付まではサービスは継続するだろう。
2018年の年次報告書では、2019年9月までとなっていたが、以前予想した通り、2年の延長となった。
次回も同じ様に更新されるかは分からない。
日本のラグナロクオンラインの売上は減少傾向にあると思われるが、恐らく、26億円程度の売上が上がっている事を踏まえると、この数字が極端に下がらない限り、サービスは継続すると見ていいのかもしれない。

PC版ラグナロクオンラインのライセンス期限 2016年年次報告書 2018年年次報告書 2019年年次報告書 2021年年次報告書
日本(ガンホー・オンライン・エンターテイメント) 2017年9月 2019年9月 2021年9月 2023年9月?

2.9 ガンホーとグラビティの関係

ガンホーのグラビティの関係は、2002年のJROのβテスト時に日本国内独占配信、販売権の契約を結んでから現在まで続いている。
ガンホーがグラビティを買収し、子会社化したのは2008年の事である。
2008年年度グラビティの年次報告書の取締役会の名簿でも、ガンホーの代表取締役社長の森下一喜氏と取締役である坂井一也氏の名前を確認できる。
2019年現在、ガンホーの役員である森下一喜氏(事務局長)、坂井一也氏(事務局長)、北村佳紀氏(取締役会長兼最高執行責任者)は、グラビティの取締役会のメンバーである。括弧の役職は、グラビティでの役職である。
北村佳紀氏はグラビティの北米支社であるグラビティインタラクティブの代表取締役を兼務している。

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会社概要|ガンホー・オンライン・エンターテイメント株式会社

ガンホーの株式の保有率は59.3%であり、前年と変わらない。
取締役会に親会社の経営陣が直接参加する体制も変わらない。
グラビティの取締役会のメンバーは、独立取締役が1名増員した以外に変化はない。
年次報告書のリスクの欄でも触れられているが、子会社と親会社の利益が常に一致するとは限らず、ガンホーとグラビティの利益が相反する可能性は常にある。
この問題はグラビティが利益を出し続ける限りは表面化する事はないだろうが、PC版ラグナロクオンラインの売上が極端に下がるといった事象が起きた場合、グラビティの日本人役員は親会社と子会社の間で利益相反を起こさずに、経営上の判断を下さなければならないという難しい立場に追い込まれる可能性がある。

直近では、Ragnarok Mの影響により、グラビティの売上は増収増益が続いている。
この状況はガンホーから見て、グラビティに対する過去の投資を回収する段階にあると推測できる。
その為、直近でガンホーとグラビティの関係が解消される事は考えられないだろう。

ガンホーが保有するグラビティの株式 2017年 2018年 2019年
割合 59.30% 59.30% 59.30%

2.10 ROのユーザー一人あたりの売上

JROユーザー一人当たりの売上の推定は、以下の通りである。
2.5の日本のラグナロクオンラインの売上の推定を、グラビティが公開しているユーザー数で割って算出した。

JROのユーザー一人当たりの売上 2016年 2017年 2018年 2019年
JROのユーザー一人当たりの売上 17万8149円 26万0944円 28万8356円 29万4261円
JROユーザー数 13,165 11,254 9,805 9,154

ユーザー一人当たりの売上は、29万4261円と高い。
恐らく、一部のユーザーが平均値を押し上げているものと思われるが詳細は分からない。
報道、アンケート調査の結果によると、月にネットゲームに1万円以上の課金をするユーザーは全体の20%という数字がある。
JROについても、全体の上位20%のユーザーの課金額が、売上全体の60%を占めるといった形になっているのかもしれない。

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過去の推移を見ると、2017年以降、ユーザー一人当たりの課金額が増加していると思われる。
JRO全体のユーザー数は減少しているが、売上そのものはあまり減っていない。これはユーザー減に伴う売上の減少を、少数のユーザーが支えているものと考えられる。
この傾向は今後も続くかもしれないが、ユーザーの所得が右肩上がりで伸び、課金額もそれに伴って上昇するとは考え難い。
ユーザーの可処分所得という限界がある以上、少数のユーザーに売上を支えてもらう施策は限界も近いかもしれない。
ユーザー数を増やして、ユーザー一人当たりの負担額を減らす努力が必要と思われるが、これは「言うは易く行うは難し」だろう。
MMORPGのユーザー層として考えられるのは、比較的、可処分時間の多い10~20代と思われるが、この層のPCの普及率は減少傾向にある。

年齢階層別にパソコンの世帯普及率の実情をさぐる(2019年版)(不破雷蔵) - 個人 - Yahoo!ニュース

10代の23.7%は「自宅にパソコンはあるけど使っていない」(不破雷蔵) - 個人 - Yahoo!ニュース

10代の38.3%は「自宅にパソコンはあるけど使っていない」(2019年公開版)(不破雷蔵) - 個人 - Yahoo!ニュース

その為、新規にユーザー数を増やすことは難しいかもしれない。
海外では、クラシック版ROをリリースすることで、新たなユーザー層を掘り起こしているようだが、日本では既にBreidablikで同様の施策を実施済みであるので、同じ対応は取れない。
新規のユーザーを掘り起こす努力をしつつ、既存のユーザーの離脱を防ぐ施策が必要となるだろう。

2.11 新型コロナウイルス感染症の影響

2020年に入ってから、新型コロナウイルス感染症が世界的に流行している。
この感染症のラグナロクオンラインに与える影響をごく簡単にまとめたい。
短期的には、在宅の人間が増えるので、単純に考えれば増益となるだろう。
ただ、この感染症の流行により、経済活動が大きく妨げられており、長期的な影響は分からない。
多くの人の雇用が失われることで、ゲームへの課金などの出費が抑えられる事も考えられる。その為、長期的には減収となるかもしれない。
開発、運営についていは、日本では新規のイベントが延期されるなど、既に影響が出ている。
開発については、テレワークでも可能な筈だが、日本のラグナロクオンラインの状況を見る限り、対応に遅れがあるのかもしれない。
新型コロナウイルス感染症の急速な流行により、態勢が整っていないようだ。
運用についても同様だろう。
日本における新型コロナウイルス感染症の緊急事態宣言も5月末まで延長された。
夏までに正常な態勢に戻るかどうかで、今後を占うべきかもしれない。

2.12 グラビティと日本のラグナロクオンラインの今後

グラビティは、Ragnarok Mをリリースして以降、増収増益が続いている。
2016年と比較すると、2019年の総収入は約7.3倍と驚異的に伸びている。
そろそろ成長も鈍化すると思われるが、Ragnarok Mそのものの事業はこれからも好調という事になりそうだ。
またグラビティは新たに、Ragnarok ORIGIN、Ragnarok X:Next Generationといった新作のMMORPGをリリースする予定らしい。
Ragnarok X:Next Generationの開発会社は、ドリームスクエアらしい。この会社は、Ragnarok Mをかつて開発していた会社である。Ragnarok Mはドリームスクエアから権利を買い取ったXD.comが開発を継続し、リリースした経緯がある。
また、中華人民共和国のテンセントもラグナロクオンラインのMMORPGを開発中とのことである。
似たようなMMORPGを立て続けにリリースするらしいが、既存のタイトルとの競合をどうするのか、どう差別化していくつもりなのかといった点が気になるところだ。

韓国Gravity、『ラグナロク』IPを活用したスマホゲームの展開を強化…『Ragnarok Origin』『Ragnarok Tactics』『Ragnarok X』を準備中!  | Social Game Info

[G-Star 2019]「ラグナロクオンライン」の系譜を継ぐスマホ向け新作MMORPG「Ragnarok ORIGIN」。ROらしさを残しつつ,グラフィックスやゲーム性が進化 - 4Gamer.net

『ラグナロクオンライン』の開発元である韓国グラビティが日本法人を通じて日本市場でMMORPGのパブリッシング事業を開始か | ネトゲ速報

グラビティゲームアライズ株式会社

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またグラビティの日本法人であるグラビティゲームアライズは、ゲームパブリッシング事業を行うらしい。
ラグナロクマスターズの日本でのサービスは、ガンホーが提供しているが、上記の新タイトルはグラビティが直接サービスを展開するつもりなのかもしれない。
ただ、上記のタイトルを日本国内でリリースするとなると、ラグナロクマスターズとの競合は避けられない。
親会社の事業と競合する形で、これらのタイトルをリリースできるのかは分からないが、上手く住み分ける事ができるのなら、日本での展開もあるかもしれない。
いずれにせよ、Ragnarok ORIGINは2020年第3四半期のリリースを目指しているらしいので、2020年の年次報告書ではこれらのタイトルの動きが確認できるだろう。

一方、PC版ラグナロクオンラインの事業も、そのグラビティ、ガンホーにとって重要性こそ低下したが、売上そのものは維持している。
またガンホーの経営陣にとって、JROからのライセンス収入が、グラビティのRO関連の売上高のかなりの割合を占める状態を踏まえると、子会社の事業に悪影響を与える決定は下しにくいと思われる。
上記のような事情を踏まえると、少なくとも2021年9月まではJROは存続するだろう。
それ以降については、現段階では分からない。
ガンホーからグラビティに支払われるライセンス料が800万ドルというそれなりの数字を維持していること、グラビティにとってもRO関連の売上高が全体の10%というそれなりのボリュームを占めるという2つの条件が維持されるのであれば、2021年9月以降もJROのサービスは存続するのではないだろうか。

3. まとめ

ラグナロクオンラインについては、開発会社であるグラビティと親会社であるガンホー・オンライン・エンターテイメントとの間に複雑な関係があり、分析に手間がかかる。
本来、ライセンシーの一つに過ぎないガンホーがライセンサーを買収して子会社にしたという経緯もそうだが、2013年以降、PCオンライン事業の単体の数字を公表しなくなるなど、情報の経路が限られている。
その為、日本のラグナロクオンラインに関する数値は、グラビティの対し、ガンホーから支払われたライセンス料を元に推測を行うなどの作業が必要である。
グラビティのモバイル関連の売上、親会社の役員と取締役会の関係など、従来の分析に加え、ユーザー一人当たりの売上、新規のMMORPGのタイトルについても考察した。
JROの今後について、どうなるかの予想は難しいが、また新たな情報を得られれば、また記事を書いていきたい。

以上で今回の記事を終わりにします。
ちょっと込み入った記事になってしまいましたが、いかがだったでしょうか。
今回紹介した情報は、ラグナロクオンラインのサービスには直接関係しないかもしれません。
ただプレイヤーとして、ゲームに関わる以上、このサービスが今後いつまで続くのかという点について、大いに関心があります。
そういった事を根拠を持って、分析するにはこの様な形でラグナロクオンラインを取り巻く現状を整理することが必要だと考える次第です。
いつまでROとの関わりを続けることになるのかは分かりませんが、ゲームを取り巻く現状を見つつ、ROとの付き合い方を模索することになりそうです。

今回はここまでします。それでは。

2020年5月5日22時30分追記
ブログに表を追加しましたが、HTMLのタグなどの文字列が長く、ブログの記事の長さの制限を超えてしまいました。
その為、モバイルの国別の売上など、一部の表は画像として、アップロードしました。

2020年5月6日23時39分追記
PC版ラグナロクオンラインの国別の売上の2016年の欄の記載が間違っていた為、訂正しました。
合わせて、PC版ラグナロクオンラインの国別の売上に占める割合の表も訂正しています。